[取材・文]林 剛
[写真提供]CULTIVATE Inc.
▶【SPECIAL INTERVIEW】Shunské G ディアンジェロ、ユーミン、南部ソウル・ブルースが共生する初ソロ・アルバムとそのキャリアを語る【前半】はこちらから。
[取材・文]林 剛[写真提供]CULTIVATE Inc.公式サイトでは“和製ソウル・バンド”と紹介されているShunské G & The Peas(以下The Peas)。そのフロントマンとしてワン&オンリーの個性を振り撒くのがShunské Gだ。スライ・ストーンやディアンジェロにも似たモゴモゴと呟くような歌い口で地声とファルセットを行き来し、ラップとスポークンワーズの中間的な歌を交えながら、時に恰幅のよいゴスペル・シンガーを思わせる野太い声で豪快なシャウトを放つ。そんな彼が、2023年11月に初めてのソロ・アルバム『Gentle Reminder』をリ... 【SPECIAL INTERVIEW】Shunské G ディアンジェロ、ユーミン、南部ソウル・ブルー... - ブルース&ソウル・レコーズ |
──それに比べると今回のソロ・アルバム『Gentle Reminder』は、当然ですがShunské Gさんの音楽趣味がストレートに反映された感じです。一曲目の〈Water Blue〉から最後の〈After Party〉まで、やはりディアンジェロがお好きなんだなという印象を受けました。
Shunské G「J・ディラが歌ものをリミックスしたすごく好きなアルバムがあって、ドラムの林一樹くんも同世代でディラやディアンジェロが好きなこともあって、あんな感じのアルバムを作りたいねって言っていたんです。わりと音がスカスカで、歌をしっかり聴いてもらえるような、たっぷりとスペースがあるもの。〈Contradiction〉は、リズムはちょっと変えているんですが、ディアンジェロの“Untitled (How Does It Feel)”を意識しています。リズム・ボックスみたいな音は一樹くんがリズム・ボックスを意識して人力で鳴らしてくれました」
──その林一樹さんがドラムを叩きながらJ.M.K.名義でプロデュースも務めていて、共同プロデューサーとして鍵盤を弾いている及川創介さんも名前を連ねています。
Shunské G「林一樹くんはプロデュースではJ.M.K.を名乗っているんですが、彼のお父さんがティン・パン・アレーのドラマーの林立夫さんで、友人のつながりで出会ったんです。そもそも今回のアルバムは一樹くんにアレンジをお願いしようと思って、ふたりで始めたプロジェクトでした。その一樹くんが以前いたバンド(Roomies)で鍵盤を弾いていたのが及川創介くん。で、創ちゃんは、今回のアルバムでもベースを弾いてくれたThe Peasの越智俊介と別のバンドをやっていたことがあって、The Peasのメンバーと仲が良かったので、今回初めて一緒にやってもらうことになりました。The Peasからは圭史さんが〈After Party〉でギターを弾いてくれています」
──その〈After Party〉は、2023年4月にシングルとして発表した際にはMILES WORDさんのラップをフィーチャーしていましたが、アルバムの配信版では客演なしのヴァージョンが収録されていて、CDのほうには両ヴァージョン入っています。曲はボビー・ブランドを意識したとのことですが。
Shunské G「そうです。リリックに“Members Only”(ボビー・ブランドが85年に出した曲のタイトル)って言葉も入っています。もともとこの曲は、自分がソロ活動を始める前、マイルス(MILES WORD)と飲みに行った時に何かやろうよみたいな話になったのがキッカケで。昔のCDシングルみたいに2種類のヴァージョンがあったのを意識して、CDには両方のヴァージョンを収録したんです」
──グラディス・ナイト&ザ・ピップスに影響された曲もあるとのことですが、どれでしょう?
Shunské G「〈One Sprit One Soul〉ですね。グラディス・ナイト&ザ・ピップスの『Neither One Of Us』(73年)の2曲目に登場する“It’s Gotta Be That Way”を意識しました。実を言うと、今回のアルバムは全曲元ネタがあるんですよ」
──潔いですね。でも、そうやって着想源を開示できるということは、それだけオリジナリティがあるという証拠だと思います。実際に模倣や引用といった印象はないですし。それを踏まえて私が個人的に着想源をお聞きしたかったのが、6月にセカンド・シングルとして発表した〈離れて/Hanarete〉。これは、タイトルやリリックも含めて、モニカの“Before You Walk Out Of My Life”(95年)的なものを感じました。
Shunské G「まさにです! これに気づかれるとは(笑)。あと、アルバム・タイトル曲の〈Gentle Reminder〉はブラックストリートの“Tonight’s The Night”(94年)を意識しています」
──〈どこ吹く風/Dokofukukaze〉はビル・ウィザーズの“Use Me”(72年)に通じるファンキーなグルーヴがありつつ、日本のはっぴいえんどあたりも連想させます。
Shunské G「確かにドラムやアレンジは“Use Me”を意識しているんですが、ビズ・マーキーがブルーノートの企画でグラント・グリーンの“Ease Back”(69年録音)をミックスしたトラックも参考にしています。はっぴいえんどはまさにというか、一樹くんとも話していて、ティン・パン・アレーやはっぴいえんどの空気感を引き継いでいけたらいいなと思っていたんです。個人的には、ユーミンが荒井由美として出した『MISSLIM』(74年)が好きで、あの世界観を自分たちの世代で再現したいなって」
──〈Pretty Mama〉は、Shunské Gさん独特のトボけたような歌い口で「Hey Sexy Lady」って歌うところが愛おしいというか、たまらないんですよね。
Shunské G「〈Pretty Mama〉は、曲としてはサー・チャールズ・ジョーンズの『The Masterpiece』(2018年)に入っている“What Can I Say”から着想を得ています」
──サー・チャールズ・ジョーンズ! 「ブルース&ソウル・レコーズ」誌っぽくなってきました(笑)。それで思いましたが、〈Deepest Forest〉のリリックには“Sweet Sticky Thing”という言葉が出てきます。オハイオ・プレイヤーズの曲名だと思うのですが、これはドリーミーなスロウ・グルーヴの曲で、アルバムで唯一のオール英語詞。歌の内容的に日本語にすると照れ臭かったり、雰囲気が出ないので英語で歌ったのかなと思ったのですが。
Shunské G「これは2パックの詩集を読んでいて、それにインスパイアされたんです。自由の味を知っても誰も傷つけることはない、という地下の芽たちへのメッセージです」
──なんだか優しいですね。Shunské Gさんの音楽には根底に優しさがある気がします。
Shunské G「アルバム・タイトルの『Gentle Reminder』は“緩やかなリマインダー”で、I Need You(あなたが必要だよ)って言うための枕詞になっている感じです」
──The Peasとしての活動は並行して続けていくのですよね?
Shunské G「はい、自分のプロジェクトで活動を止めて、メンバーにも待ってもらっているので(笑)……2024年は動かしていこうと思っています」
《今回のインタビューで出てきたアーティストの曲などからなるプレイリスト》
Shunské G - Elements of Gentle Reminder
プレイリスト作成 林剛
※林剛氏によるアルバム『Gentle Reminder』のリヴューはブルース&ソウル・レコーズ No.175に掲載。
近年入手困難盤も増えてきたブルースCD。ベストセラーとなったロバート・ジョンスンの『コンプリート・レコーディングス』(1990年)を筆頭に、主に90年代のブルース熱以降に登場したCDコンピレーションから、リイシュー/発掘音源を収録した名編集盤を140タイトル以上ピックアップして紹介します。入門盤に最適なものから、コレクター垂涎のレア音源集、CDで初めて世に出た未発表ライヴ、などなど、ブルース・ファンの間で話題となり、国内外で高く評価されたブルースCDのカタログとしてもお楽しみください。[Chapter 1] 戦前ブルー... 特集 ブルースCDコレクション[リイシュー/発掘音源編] - ブルース&ソウル・レコーズ |
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Shunské G
Gentle Reminder
CD (Always AR-0001) [ライブ会場限定発売中]
1. Water Blue
2. 離れて / Hanarete
3. どこ吹く風 / Dokofukukaze
4. Pretty Mama
5. Contradiction
6. Deepest Forest
7. Gentle Reminder
8. One Spirit One Soul
9. After Party
10. After Party feat. MILES WORD