2018.9.27

渾身の新作発表で名ソウル・シンガー堂々の復活!ウィリー・ハイタワー

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 10月にビルボードライヴ大阪と東京にて行われる公演「メンフィス meets マッスル・ショールズ」を首を長くして待っているソウル・ファンは多いことだろう。ソウル名門レーベル、スタックスのサウンドを支えたギタリスト、スティーヴ・クロッパーが、同じくメンフィスを拠点に数々のソウル名作を生んできたリズム・セクション、ハイ・リズムと共に来日。そこに「伝説の」と形容したい名ソウル・シンガー、ウィリー・ハイタワーが加わるのだから、これが落ち着いていられようか。そしてアルバムとしては実に半世紀待たされた待望の新作『アウト・オブ・ザ・ブルー』をウィリーが発表したとあっては興奮も絶頂となる。

 アメリカ南部のソウル・ミュージック、いわゆる「サザン・ソウル」を愛好している者にとって、ウィリー・ハイタワーの名前は特別だ。60年代から70年代にかけて発表したシングルの数々はサザン・ソウルの傑作として名高く、1968年に発表されたアルバム『If I Had A Hammer』(Capitol ST-367)はファンにとってお宝となっている(現在はiTunesやSpotify、amazonでボーナストラックを追加したものが聴ける)。

 ウィリー・ハイタワーの歌声はゴスペルで鍛えられた激しさと、懐深い優しさに溢れている。節回しはウィリーのアイドルであるサム・クックに負うところが多く、そこがまたソウル・ファンの心をつかむことにもなっている。だがその実力に比して、ウィリーのディスコグラフィは少々寂しいものだ。シングルは20枚にも足りず、アルバムは先述の1枚だけ。80年代にも録音を残したが、当時未発表に終わったものもあり、わずか1枚のシングルを発表しただけであった。その未発表音源は今回の来日で共演するハイ・リズムのメンバーとのもので、『クイントン・クランチのソウル秘宝館』(Pヴァイン PCD-25052)として日本でのみCD化されている。90年代にはレコーディングの機会に恵まれなかったが、ウィリーは地元アラバマを中心に歌い続けていた。このたび発売された新作『アウト・オブ・ザ・ブルー』の録音のいきさつはアルバムのライナーノーツに詳しい。

クイントン・クランチのソウル秘宝館

 待望の新作をプロデュースしたのは、96歳となるクイントン・クランチ。メンフィスでゴールドワックス・レコードを立ち上げ、ジェイムズ・カーやスペンサー・ウィギンスを世に出したサザン・ソウルの伝説的プロデューサーだ。高齢のクランチを支えたのが、本作の複数の曲でソングライターとしても活躍しているビリー・ローソン。録音はマスル・ショールズのウィッシュボーン・レコーディング・スタジオで行なわれている。そのスタジオを立ち上げた一人が、本作にもキーボードで参加しているクレイトン・アイヴィで、ギターのトラヴィス・ワマックと共に60年代からマスル・ショールズのサウンドを支えてきたミュージシャンだ。

 これ以上ないサポートを得たウィリー・ハイタワーは、新作でそれに応える歌声を聴かせる。アルバム・タイトルが歌詞に登場する冒頭の“I Found You”での生き生きとした歌声に頬が緩む。この世の終わりが来たと思うほどの苦しい失恋を体験した男が、思いがけなく(out of the blue)、新たな愛を見つける。その喜びが歌声を通してリスナーの心を温めてくれる。その喜びは再びレコーディングの機会を得たウィリーの心と共鳴しているかのようだ。歌声の持つ包容力は若い頃よりも増していると思わせ、丁寧に言葉を伝える歌い口は、以前ほどサム・クックのスタイルに負ってはいないが、随所にその面影を感じさせてくれる。

 懐古的な再現ではない、温かさを強く感じさせるバンド・サウンドに乗った全10曲、時間にして30分強だが、ずっしりと手応えのあるアルバムを届けてくれたウィリー・ハイタワー。10月の来日ステージがますます楽しみになってきた。

WILLIE HIGHTOWER / Out Of The Blue
(Soultrax / Ace CDCHD 1520)
ウィリー・ハイタワー/アウト・オブ・ザ・ブルー
(Pヴァイン PCD-17786)[直輸入盤国内仕様/英文解説対訳・歌詞付]
p-vine.jp/music/pcd-17786

QUINTON CLAUNCH'S HIDDEN SOUL TREASURES
クイントン・クランチのソウル秘宝館
(Pヴァイン PCD-25052)

[メンフィス meets マッスル・ショールズ公演情報]
ビルボードライヴ大阪公演
*2018年10月25日(木)

ビルボードライヴ東京公演
*2018年10月27日(土)、29日(月)、30日(火)

詳細はビルボードライヴ公式サイトを参照ください。
billboard-live.com/

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