2021.3.19

ブルース入門に最適のディスク・ガイド・ブックが10年ぶりに改訂

1920年代から現在まで、時代とともに様々なスタイルのブルースが生まれ録音されてきた。その量は膨大。どこから手をつけたら……と迷える音楽ファンにとって、その良き案内役となる一冊がこのたび10年ぶりに改訂版として再登場した。

レコード・コレクターズ増刊「アルバム・セレクション・シリーズ」のブルース編は、220枚のアルバムを紹介したガイド・ブック。

まずはブルースの歴史上でもとりわけ重要なアーティスト11名をピックアップし、各人のプロフィールと代表作が収められたアルバムを紹介する。本書の3割以上を占めるこの章で、ブルース黄金時代といえる1920〜60年代の流れを大まかにつかむことができる。

次に「DOWNHOME BLUES」と題された、アメリカ南部あるいは同地の感覚に強く根ざしたブルースを紹介する章が続く。南部から多くの黒人が移住し“北部のミシシッピ”とも言われたシカゴのブルース、なかでもダウンホーム感覚の強い戦後シカゴ・ブルースもこの章で登場する。

3つめの章は「BLUES FOR BIG TOWN」と題し、「都会」で発展したブルースを主に取り上げている。時代や場所で様々なアンサンブルが聞かれ、多様性をさらに増したブルースが楽しめる。この章の後半には「ブルース・ロック」「ニューオーリンズR&B」「ロックンロール」等にジャンル分けされる、ブルース周辺(関連)作品も選ばれ、ブルースがいかにして広まり発展してきたかを教えてくれる。

おそらく日本で最も多くブルースについての文章を書いてきた著者だけに、要点をズバリ突いた紹介文は初心者に安心の内容。随所にちりばめられたちょっとした逸話は、ブルースマンや作品との距離を縮めてくれる。

改訂版では、前回から4分の1ほどのアルバムを差し替え、サブスクリプションサービスの情報(Apple Music, Spotify)を追加、紹介文も全面的に見直されている。

廃盤となったCDでもネット上で聴けるものは多い。ただし、ライナーノーツや録音データ等の情報は得られない。コンパクトながらみっちりと情報が詰まった本書は、それを補ってくれる一冊として重宝するにちがいない。

レコード・コレクターズ増刊
アルバム・セレクション・シリーズ
ブルース 改訂版
小出斉 著
発行 ミュージック・マガジン
定価1650円(本体1500円)

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