ブルース&ソウル・レコーズ

刺繍アーティストYuriの個展『Soulful Tapestry』が新宿〈Soul Stream〉にて開催

刺繍アーティストYuriの個展『Soulful Tapestry』が新宿〈Soul Stream〉にて開催

取材・文/井村猛
取材協力/valve daikanyama


マーヴィン・ゲイ『What‘s Going On』やスティーヴィ・ワンダー『Hotter Than July』といったレコード・ジャケットを手刺繍で立体的に表現する刺繍アーティスト「Yuri」の個展『Soulful Tapestry』が12月2日より新宿〈Soul Stream〉にて開催される。

母親に教わり子供の頃から手芸をはじめ、社会人になってからも手芸店で購入した花の刺繍キットなどを趣味として作っていたというYuriさん。刺繍キットでも決められた通りに図柄を完成させる達成感はある。だけど何か物足りない。それなら自分が好きなものを作ってみようと思い立ち、最初に手掛けたのが大好きなスティーヴィの『Hotter Than July』のジャケットだった。それを音楽好きの友人や馴染みのミュージック・バーのマスターに見せると大好評、「他のも見たい!」という声に押されて音楽をモチーフにした作品を作り始めるようになる。「私が作ったものをもっと見たいと思ってくれる人がいることが嬉しくて。それがきっかけですね」2019年、いまから4年前のことだ。

その後、周囲の勧めもあって稲毛Bar Memphisやvalve daikanyama、ディスクユニオンお茶の水ソウル/レアグルーヴ館、FACE RECORDSなどで個展を開くようになり、「刺繍アーティストYuri」の存在が音楽ファンの間で広まっていった。

もともとはロック好きだったのが、ウータン・クランやア・トライブ・コールド・クエストなどヒップホップを聴くようになり、サンプリング・ネタを辿ってソウルに興味を持ちはじめた。そんなある日、バーのテレビに映る『ソウル・トレイン』でダンサー達に囲まれ鍵盤を弾き歌うスティーヴィ・ワンダーに心を奪われる。「いったいこれは何だろう、私が知っているスティーヴィとは違う。ソウルはどういう音楽なんだろう、もっと知りたい、と興味を持ちました。ソウルは古い音楽かもしれませんが、私には聴いたことがない新鮮なものだったんです」そこからモータウンやスタックスなどの60~70年代ソウルを聴き漁るようになり、調べれば調べるほどソウルが好きになっていった。気に入った曲は100回以上聴いても飽きない。「一曲にハマると何回でも聴きたくなるんですよね。聴くたびに楽しくなるんです」


刺繍アーティストのYuriさん。手にしているのはスティーヴィ・ワンダー〈マイ・シェリー・アモール〉の歌詞を一文字一文字縫ったお気に入りの作品。

そういった「好きなものにはとことんのめり込む」気質は作品制作でも活かされているようだ。図柄をトレースしてチャコペーパーで布地に転写、それを下絵に一針一針縫っていく。厚みを出したいところは一本取りではなく二本取りにしたり、微妙に色の違う糸を連ねて陰影を表現したり、リボンやビーズといった素材を取り入れたりと試行錯誤を重ね、平日の隙間時間や週末を費やし何十時間もかけて一つの作品を仕上げていく。例えば、デニース・ウィリアムズ『This Is Niecy』のジャケットは完成までに延べ100時間、約一カ月かかったという。

「レコード・ジャケットを手芸屋さんに持ち込んで、ジャケットに合う色や素材の糸を自分自身で選んで買いました。縁にはリボンを使って、肌のところはランダムに縫って、黒い麦わら帽子は感じを出すためにチェーンステッチで、ドレスはサテン糸で綺麗にまっすぐにという風に、縫い方を変えて表現しています。花のところは立体感を出すために5、6色を使っていますが、なかなか終わらなくて本当に気が変になりそうでした」

クロスステッチでドット絵のようになったマーヴィン・ゲイ『What‘s Going On』、黒糸だけで描かれたブルース・ブラザーズ盤、たくさんのビーズを使ってその色鮮やかな装いを再現したシリータの1980年Tamla盤 —— 馴染みのあるジャケットなのに、刺繍となったそれらはとても新鮮だ。ずっと眺めていると、そこに収められた音楽やアーティストの人柄さえもが糸の質感を通じて伝わってくるように感じる。「ソウルのジャケットと刺繍はすごく相性がいい」とYuriさんが言うように、ソウル・ミュージックの「体温」を目に見えるカタチにするのに「刺繍」はうってつけなのかもしれない。

ダニー・ハザウェイ『Live』やジェイムズ・ブラウン盤など作りたいジャケットはまだまだたくさんある。最近では音響機材やジュークボックスをモチーフにしたオリジナル・デザイン作品を制作するようにもなった。その制作意欲はどこから来るのだろうか。

「私の作品をきっかけにしてアーティストや音楽について話が盛り上がったりとか、とにかく皆さんに楽しんでもらいたいと思っています。そしていつか、自分が好きなアーティストの新作アルバムのジャケットを私がデザインした刺繍で作ってみたいですね」

百聞は一見に如かず。個展『Soulful Tapestry』でソウル・ミュージックを聴きながら彼女のソウルフルな刺繍アートをぜひ楽しんでいただきたい。

 

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■Yuri刺繍展『Soulful Tapestry』

期間:2023年12月2日(土)〜12月27日(水)
場所:Soul Stream
住所:東京都新宿区新宿3-10-9 FBビル1F
営業時間:18:00〜1:00
定休日:火曜日
www.soulstream-bar.com
店舗Instagram:@bar_soul_stream

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【Yuriプロフィール】
レコード・ジャケットに魅力を感じ、趣味の手刺繍と組み合わせ、2019年より手芸作品の制作を行う。制作物はレコード・ジャケットの他にアーティスト、楽器、音響機材等、主に音楽に関わるものを中心に制作。材料は刺繍糸に限らず、毛糸やビーズなど様々な材料を使用し、手作業で自分らしい作品を作り出す。現在は展示を中心に活動を行なっている。
Yuri Instagram X(Twitter):@_lily_stitch