2024.11.20

吾妻光良 & The Swinging Boppers 9th New Album 本日発売!吾妻光良に聴く『Sustainable Banquet』

2024年11月20日に吾妻光良&ザ・スウィンギン・バッパーズによる通算9作目が発売された。
吾妻氏も執筆するブルース&ソウルレコーズ誌ということで、収録曲の元ネタを中心にざっくばらんにジャンプ愛を語っていただいた。なお12月25日発売の本誌(No.181)にもインタビュー関連記事を掲載予定なのでぜひお読みください。

文/妹尾みえ
協力/ソニー・ミュージックレーベルズ


――SとBにこだわってきたタイトルですが、今回は弱冠45周年のお祝い感も帯びている気がします。

吾妻光良(以下:吾妻)「結成当初からライヴ後に欠かさず飲んできたということでこうなった。まだやってるよという意味で“Still In Business”という候補もありましたね」

――1曲目はその飲み会がらみで「打ち上げで待ってるぜ」。サックスの(渡辺)康蔵さんと掛け合うところもザ・トレニアーズ風です。

吾妻「カヴァーの<GO! GO! GO!>を入れるとこれで4曲目かな。脱いだ靴の臭いをサックスに嗅がせるという “Salt Smell Shoe”の動画が観たいよね。ああ、くだらない。それはともかくこのイントロ、どこかで聞き覚えない? ロックンロールの始まりとも呼ばれているジャッキー・ブレンストンの〈ロケット88〉ですよ」

――うわー!そうか。打ち上がるロケットと飲み会が掛けてある!

吾妻「それとこの曲はシングルを切った体なんです。<最後まで楽しもう>がヒットして2作目の<ご機嫌目盛>がまあまあ。でも次から次へと似たような曲を出すと売れない。そういう世界観の元で作られているわけ」

――吾妻さんにとって売れるとはどういうイメージなんですか?

吾妻「40年代に置き換えると、1942年に始まったビルボードのハーレム・ヒット・パレードに入る!ジェリー・ウェクスラーがRhythm & Bluesと名づけてからはそのチャートに入る!」

――なるほど(笑)。それにしてもこの曲は「みんなおいでよ」と言われてるようで、ちょっと胸が熱くなる瞬間があります。

吾妻「気がつけば今回コロナがらみの曲が多いんだけど、元職場の後輩から大きな仕事を終えたのに打ち上げもなかったと聞いた時は強烈にショックだった。あとはもう来たくても来れない友だちのことが、ちょっと頭をよぎるところもあるよね」

――2曲目の高齢者への応援歌“Jeepers Creepers”は、ドラマーのジーン・クルーパ楽団の曲。ヴォーカルはスピリッツ・オブ・リズムにも在籍したレオ・ワトスンでしたね。

吾妻「日本語詞はJeepersを爺ちゃんにした空耳みたいなものだけど、岡地(曙裕)のドラムがダンスしているみたいで強烈にジーン・クルーパっぽい。それと西川文二のテナー・サックス。そこを聞いてほしいですね。レオ・ワトスンはとにかく天才。どうしてスキャットってあんなに楽しいんだろう。その場で作曲しているかのようでメロディー感覚がものすごい鋭いんだよ」

――3曲目の「俺のカネどこ行った?」はブラック・ミュージックには少なくない、いわゆる“カネもの”ですが、こちらはオリジナル?

吾妻「出来事優先。年金事務所に行ったら前もって聞いてた話と額面が違うし、なんでもかんでも高い。“無ーい、無ーい、無ーい”っていうメンバーとの掛け合いはゴスペルのコール&レスポンスです。キング・ペリーの“Keep A Dollar In Your Pocket”なんかカッコいいけど日本語にはお金の歌って少ないか。下品な感じがするのかね」

――そこは吾妻さんがよくおっしゃるフォークソングの下地がない所が功を奏しているような気がします。

吾妻「そうかな。まあ腹は立ててるものの、あんまり怒りはないでしょ?」

――続いてインクスポッツ風の「昼寝のラプソディ」はハトの鳴き声表現が傑作!

吾妻「これはもう退職が大きい。それまで眠くても寝てないふりをして働いていたのに今は昼寝しちゃう。で、語りの部分からジ・インク・スポッツの“When the Swallow Comes Back to Capistrano”につながっちゃうんだ、あの曲には語りは入ってないけど鳥つながりでインク・スポッツにね。え、ハトはそんな風に鳴かないって? いやいや、よく聞いてみ。ハトって4拍子なんだよ。しかも突然鳴き止むから死んじゃったのか!?って心配になったりして」

――スリム・ゲイラードとかルイ・ジョーダンにもトリの鳴き声をモチーフにした曲がありますがインスパイアされたところもありますか?

吾妻「鳴きまねしたかったっていうのはあるね。イヌだとちょっとブルースっぽくなるからやっぱりトリだろうな」

――以前からブラック・ミュージックのカッコいいことは全部やりたいとおっしゃっていますが、鳴きまねもその一つですか。

吾妻「そうそう!カッコいいことだけでなく、カッコ悪いことも全部まねしたい!」

――まだやってなくてやりたいことは?

吾妻「何だろうなあ。8曲目の<俺の薬はデカい>は、モジョものに仕立てたという意味では、やりたかったことかもしれない。以前メンバーの誰かが割らないと薬が飲めないというのを聞いて、これは曲になる!と思ったもののストーリーができなかった。それが苦節何年、ええい!モジョものにしてしまえとなって完成に至ったわけです。ただ朝から頭痛薬7錠って歌詞を以前の曲で唄ったら薬事法的にまずい、と指摘されて治したこともあるので、その辺はちょっと気をつけました」

――ラリー・ダーネル「Boogie-Ooogie」はEGO-WRAPPIN'の中納良恵さんの体温を感じる歌声で一気に花開いていく感じが心地よいです。

吾妻「音域の広いよっちゃんだからこそできた曲。ただ転調の連続なものだからメンバーからはもう勘弁してください!と泣きが入りましたね。でもすったもんだあったのに1回で録音OKだったのは自慢。ゲストがいるとみんな締まるしね」

――Leyonaさんを迎えた10曲目の「L-O-V-E」もそうですか

吾妻「そうだね。これは永くやってるし楽勝で演奏できました」

――ラッキー・ミリンダの“Don’t Hesitate Too Long”は「ためらうなよ」という日本語詞もすばらしいのに許諾がおりなかったという。

吾妻「悔しい~。ただ、そっくりなんだよ、ラッキー・ミリンダに。それだけでめちゃくちゃうれしい! 最近、中学生バンドみたいにコピーするのが楽しくなってきてね。腕が上がったというより幼稚になってきてるんじゃないか!?」

――一方ジミー・ラッシングの“Old Fashioned Love”はパブリック・ドメインだったとか。

吾妻「そう。ジェイムズ・P・ジョンスンさん、早いうちにいい曲を書いてくれてありがとう!コロナ禍初期に生まれた曲で、当時Zoom飲み会とか嫌でね。早く直に会いたいなという気持ちを昔ながらの恋愛になぞらえた」

――<正月はワンダフルタイム>はバンバンバザールのコンピに収録されていた曲ですね。

吾妻「リアレンジしたけど1月にしか演奏できないのが難点。再録としてはアナログ7inchのみのリリースだった、虫が混入したビールを歌うジーン・フィリップスの“BIG BUG BOOGIE”もあります」

――ゲイトマウス・ブラウンのブルースを思い起こさせる<誰もいないのか>は人手不足を真っ向から取り上げつつ、便利なようで不便なAI時代への風刺にもなっている点に共感します。

吾妻「店員がバーコード持ってきてそれっきりとか、料理運んできたロボットがフリーズしちゃうとか実話だからね。曲はクーティ・ウィリアムス楽団にゲイトが入ったイメージ。エレキ・ギターが導入された当初、一度は合奏方向に向かった40年代のギタリストはフルバンドと相性がいい。リフも弾くけど時にガッとソロで出る。ゲイトなんかまさにそれだよね」

――吾妻さんが大切にしているのは“合奏”ですよね。

吾妻「そこは間違いない。しかしこうしてみるとジジイの歌が増えちゃったね」

――年はとっても枯れた感じにならないのがジャンプ・バンド、バッパーズの良さですよ。年齢を受け容れて逞しくなった気さえします。

吾妻「確かに枯れた感じはムリだな。枯れたら解散だね」

――ぜひ枯れずに50周年を目指し合奏を続けてください!


Sustainable Banquet(サステナブル・バンケット)

吾妻光良 & The Swinging Boppers

昭和~平成~令和と、まーったり活動、今年で結成45周年を迎えた、日本が世界に誇る12人編成、平均年齢66.8才の"JUMP & JIVE"バンド"吾妻光良 & The Swinging Boppers"。2019年5月22日に発売されたアルバム「Scheduled by the Budget」以来、約5年半振りとなる通算9枚目のアルバムをリリース!!

1. 打ち上げで待ってるぜ
2. Jeepers Creepers
3. 俺のカネどこ行った?
4. 昼寝のラプソディ
5. Boogie-Oogie
6. Don't Hesitate Too Long
7. Old Fashioned Love
8. 俺の薬はデカい
9. 正月はワンダフル・タイム
10. L-O-V-E
11. 誰もいないのか
12. BIG BUG BOOGIE (Bonus Track)

アルバム発売記念イベント決定!!

11/30(土)15:00~ タワーレコード渋谷店
www.110107.com/s/oto/news/detail/TP03486
12/1(日)14:00~ diskunion JazzTOKYO(御茶ノ水)
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Further Information: www.110107.com/boppers
Sony Music Labels Inc. / Legacy Plus

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