2025.3.6

【SPECIAL INTERVIEW】昨年の磔磔50周年記念ライブの大トリのステージを収録した三宅伸治&The Red Rocksのライヴ・アルバム発売!三宅伸治・インタビュー

三宅伸治(MOJO CLUB、ex.ザ・タイマーズ)の生誕60周年を記念して2021年に結成されたバンド、The Red Rocks。
その昨年、放送されたドキュメンタリーも話題になった京都の老舗ライヴ・ハウス、磔磔の50周年記念ライブの大トリを務めた5月25、26日の演奏を収めたライヴ・アルバムが発売となった。

7インチ・シングルで先行リリースされたふたつの新曲、テンション爆上がり必至のグルーヴィなブルージー・ロックンロール・ナンバー「出発」、ほろ苦いメロディとメッセージが胸を打つポップ・ソウル・チューン「どうして僕らは」に加えて、The Red Rocks の代表曲「心のラブソング」、三宅伸治によく似た TOPPI なる人物が在籍したザ・タイマーズのヒット曲「デイ・ドリーム・ビリーバー」などがアルバムには収録されている。三宅伸治とバンドの絶好調ぶりを存分に見せつける充実のライヴ・アルバムだ。そのアルバムについてやブルースとの出会いなどを三宅伸治氏にお伺いした。

文/原田和典
協力/Pヴァイン


--- 『ブラック・ゴールド・ライヴ!』は、猛烈な臨場感が伝わる一枚です。3作目にして、ライヴ盤を発表した理由を教えていただけますか?

前作『GOT TO BLUES』は無観客のライヴハウスで一発録りしましたが、僕らはお客さんがいてくれるとさらに燃えるんです。このバンドはやっぱりライヴが素晴らしいので、ぜひそれをアルバムで聴いてほしいと思いましたし、それなら新曲の「出発」や「どうして僕らは」も含めてライヴで録音しようということでレコーディングしました。アルバム・タイトルはニーナ・シモンの『ブラック・ゴールド』に由来しています。ファースト・アルバムの『Red Thanks』から、毎回、タイトルには色を入れていますね。

--- 4人組バンド“三宅伸治&The Spoonful”のメンバーを軸に、三宅伸治&The Red Rocksが始動したのは2020年のことですね。

僕が還暦を迎えた4年前、新型コロナウィルスの頃から活動が始まりました。「人が集まっちゃいけない」という空気の中、まったく逆に集まって音を出し始めたんです。みんなその時はライヴが延期や中止になって時間に余裕がありましたが、今もそれぞれの活動がある中でバンドが続いているのは感慨深いというか嬉しいですね。

--- サックス、トランペットにハープ(ハーモニカ)が加わる分厚いホーン・セクションも、The Red Rocksの大きな魅力だと思います。

やっぱ、メンバーにKOTEZがいますから。僕は基本的にロックバンドにブルースハープがいる編成が好きなんです。一番わかりやすい例はJ・ガイルズ・バンドかな。ハープが自由に吹いて、ホーン・セクションがあってというのも好きですし。KOTEZはMOJO CLUB(1987年デビュー)が初期に「MANDA-LA2」に出ていた頃から聴きにきてくれていました。

--- 「心のラブソング」での、誰もがリード・ヴォーカル的な展開も気持ちいいですね。

ザ・バンドの『ラスト・ワルツ』の「ザ・ウェイト」みたいに、みんなでヴォーカルを回しあうのも好きなんです。演奏に関してもこのバンドは遠慮のない連中ばかりですから、やっていてやっぱ楽しいですよ。もう、その瞬間瞬間を全部任せることができます。ドラムのAKANEにしても、長くズクナシで演奏してきた経験があるからか、歌の強弱に合わせられる素晴らしい演奏をしてくれます。

--- 『ブラック・ゴールド・ライヴ!』には京都のライヴハウス「磔磔」の50周年記念ライブの大トリ公演が収められていますが、三宅さんにとって「磔磔」とはどのような場所ですか?

磔磔のステージの後ろに、ちょうちんがあるんです。このちょうちんは、50年の歴史の中で、実は2代目なんですよ。初代のちょうちんは、僕が若い頃、まだデビューしているかしないかの時に、肩車で演奏している時にギターのヘッドで破いてしまったんです。(店主の)水島さんに謝ったら、「これからもずっと出てくれたらいいよ」と言われて、磔磔とはそれ以来の長い付き合いで本当にありがたいです。出演している方は皆さんわかっていると思いますが、磔磔には「盛り上がる何か」が宿っているんです。それをあの場所自体にすごく感じます。

--- 三宅さんはどのようにして、ブルースやソウル・ミュージックに惹かれていったのでしょうか?

4つ上の兄貴からの影響が大きいですね。出身は宮崎なんですが、関西にはソー・バッド・レビューや憂歌団がいて、東京にはRCサクセションや古井戸がいて、福岡にはサンハウスがいて、大学を受けるときにどこにいこうか考えていたころに、当時、古井戸のメンバーだったチャボさん(仲井戸"CHABO”麗市)と知り合うことができて、東京に行きました。

--- 学園祭に4つのバンドで登場したというエピソードがありますが、これは上京してからですか?

宮崎にいた高校の時です。今思い出せるのは3つなんですが、ひとつはジャグ・バンドです。中村とうようさんの編集した2枚組(『ブラック・ミュージックの伝統・上巻』)を聴いて、やってみたいと思って、友達に「瓶を吹いてくれ」と頼んで。もうひとつのバンドでは、吹奏楽部の連中にホーン・セクションを組んでもらって、ジェイムズ・カーの「ラヴ・アタック」とかを歌いました。それからブルース・ロックのバンドも組みましたが、そこでドラムを叩いていたのが、今ジャズ界で活躍している外山明です。

--- 鋭すぎるセンスを持つ高校生だと思います。ある意味、孤高だったのではないでしょうか?

ただひとりだけ、そういうのが好きな友人はいました。カタログを取り寄せて、しるしをつけて、送料節約のために一緒に名古屋のレコード店に通販を申し込みましたね。あとは、ソウル・ミュージックの評論家の桜井ユタカさんの早稲田大学時代の同級生が宮崎県庁で働いていて、高校の時に知り合うことができました。桜井さんとその方のレコード・コンサートでは、スタックス以外の、たとえばゴールドワックスのようなソウルを聴かせてもらったり、B.B.キングの「スウィート・シックスティーン」を聴いたり。いろんなことを教えてもらいましたね。

--- そして今も、三宅さんは自身の音楽活動のいっぽうで、情熱的にレコードを集めています。

ツアー先のレコード店めぐりは欠かせませんね。今も自分は7インチもいっぱい買いますし、そこでしか聴けない音源も多いですからね。SPも聴きますし、それぞれに魅力があります。

--- 伝説的なブルースマンの来日公演も、いろいろご覧になったそうですね。

ライトニン・ホプキンスを見たのは高校2年の時でした(78年に唯一の来日)。修学旅行をサボって、名古屋の公会堂に行ったんです。ギンギラの衣装で、サングラスをかけて、帽子かぶって、お客さんにウィスキーの小瓶をもらって“デヘヘヘ”という感じでステージをやって。終わった後に友達とロビーで「ライヴ、良かったね」とか話していると、ライトニンが衣装のままウィスキーを持ってこっちにやってこようとした。関係者が「違う」って止めていたのを思い出しますね。マディ・ウォーターズを見たのは、僕の記憶に間違いがなければ新宿厚生年金会館です(80年に唯一の来日)。オープニング・アクトでウシャコダが出ていたと思います。マディは最後の「ガット・マイ・モージョ・ワーキン」で立ち上がって、独特のダンスをするんですが、本当にお客さんが全員興奮していました。「これはなんだろう、なんかすごいものを見てしまった」と大感激しましたね。この日は確か2回公演で、僕は2回とも見たかったから、1回目のあと、2回目が始まるまでずっとトイレに隠れていた覚えがあります。その話を忌野清志郎さんにしたら、「俺も渋谷公会堂でサム&デイヴを見たとき、同じことをしたよ」と言っていましたね。ジョン・リー・フッカーは清志郎さん、チャボさんと一緒に確か郵便貯金会館で見ました(84年に唯一の来日)。清志郎さんが「ジョン・リー・フッカー!」とフルネームで声援を送っていましたのを思い出します。日暮(泰文)さんがおこなった最初の海外ツアー(ダウンホーム・ブルース・ツアー)にも参加しました。がんばってお金を貯めて参加して、マジック・スリム等を見ました。ギンギンのステージで、日本に帰ってから「これでいいんだ、よしこれだ」と思って組んだのがMOJO CLUBなんです。

--- 三宅さんにとって、ブルースの魅力とは何ですか?

ブルースは、本当に力のある音楽だと思います。「つらいな」みたいなことがあってもそれを跳ね返すような力があるというか。もちろんソウルでもそうですが、こうしたところに強く惹かれますね。

--- ありがとうございます。では、ラストに『ブラック・ゴールド・ライヴ!』について、改めて一言いただけますでしょうか。

昨年は計225本のライヴをしました。ライヴがなければ本当に自分の生きる場所がないという感じです。その中の、磔磔の50周年記念ライヴの大トリを務めた時の音源がこうやって形になって、皆さんに届けられることは本当に嬉しいです。ぜひ、聴いてください。


ブラック・ゴールド・ライヴ!
MIYAKE SHINJI & THE RED ROCKS

Songs
1. ブギシンジ
2. 俺の愛は何処だ?
3. 心のラブソング
4. チャック・ベリーと友達になった
5. どうして僕らは
6. 出発
7. 天国音楽
8. 歩くよ
9. 悲しい歌
10. デイ・ドリーム・ビリーバー
11. たたえる歌

MIYAKE SHINJI & THE RED ROCKS
三宅伸治: Vocal, Electric Guitar
伊東ミキオ: Keyboards, Backing Vocals
ウルフルケイスケ: Electric Guitar, Vocal (#4), Backing Vocals
髙橋“Jr.”知治: Electric Bass, Backing Vocals
KOTEZ: Harmonica, Backing Vocals
AKANE: Drums, Backing Vocals
MONKY: Tenor Saxophone, Horn Arrangement
MAKOTO: Trumpet

Recorded live at 磔磔, Kyoto, May 25 and 26, 2024
Recorded, mixed and mastered by 川口 聡 (Casbah Sound Studio)

詳細はこちらから p-vine.jp/music/pcd-18917

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