2023.9.29

【LIVE REPORT】堺ブルースフェスティバル 街がブルースの音色に彩られた2日間

東京から足を延ばし、大阪の《堺ブルースフェスティバル》に出かけてきた。僕には堺市自体が初めての地だったが、以前から気になっていたイヴェントのひとつだったのだ。2014年に第1回が開催され、コロナ禍での2020年、2021年と2度の中止を経て、昨年復活。今年で8回目を数えた。

堺市役所前とその隣の堺地方合同庁舎前の広場に2つのメイン・ステージを設置。その他7つのバーやカフェなどでも同時進行でライヴが展開される。お店への入店時には、オーダーは必要となるものの、ミュージック・チャージはかからない。しかも、公式プログラム冊子まで無料で配布する気前のよさだ。

フェスは、企業の協賛金と献身的なヴォランティア・スタッフの熱意によって支えられている。東京界隈で近いものがあるとすれば、同様にチケット代がかからない《すみだジャズストリートフェスティバル》あたりだろうか。このフェスの前の週には大阪市内で《なにわブルースフェスティバル》も開催されている。東京近辺ではブルース系のフェスが少なくなる中、このようなフェスが健在な大阪は羨ましい限りだ。

《堺ブルースフェスティバル》は、有名どころから、地元で活動するアマチュア・バンドまで、出演アーティストは実に175組を数える。9月17日(日)と18日(月・祝)の2日間、午前中から夕刻まで、堺東駅の周辺あちらこちらで賑やかな音が鳴り響くのだ。台風の季節だけに天気が心配であったが、蓋を開けてみれば両日とも晴れ渡り、フェス・シーズンの夏を締めくくるに相応しい日和となった。逆に晴れすぎて猛暑がきつかったが、実にビールが旨いフェスだった。

メイン・ステージのトリを務めたのは初日が永井“ホトケ”隆のオールスター・バンド、二日目は4年ぶりに来日したジョニー・バーギンが菊田俊介とがっぷり組んだ特別セットだった。共に清々しいほどのストレートなブルースをブチかまし、道行く人は足を止め、大いに盛り上がりを見せた。特にバーギンのプレイはエディ・テイラー、ウィリー・ジェイムズ・ライオンズ、はたまたオーティス・ラッシュとシカゴ・ブルースの先人の面影を感じさせる深みを滲ませ、これがまさに「ブルース」のフェスであることを実感させてくれた。


永井ホトケ隆

内田勘太郎のステージも圧巻だった。ギター1本で登場した彼は、ブルージーな唯一無二のプレイを披露。そのサウンドは時にジャズ、沖縄と縦横無尽にジャンルを飛び越えるが、憂歌団のナンバー“Midnight Drinker”で激しくブルージーなスライドを響かせると、なんだかんだでブルースあっての勘太郎だなぁと思った。ステージ後半は濱口祐自がゲストで入る見せ場もあった。2人の共演はほのぼのと休日の午後を和ませてくれた。


内田勘太郎 & 濱口祐自

僕がこのフェスを魅力的に感じたのは、個人的に馴染みの薄い、あるいは見る機会が少ないバンドが多く出演していたこともあった。長年親しんできた有名どころを見るのもいいが、自分にとって未開の世界を知るのは何ともワクワクするのである。その多くがノリノリで楽しい演奏で観衆を引きつけていたのは特筆に値すると言えるだろう。
何せ総勢175組である。それぞれのライヴを個別に語ることはとてもできないが、PヴァインからNacometersの新譜を出し、飛ぶ鳥を落とす勢いのNacomi Tanakaも東京からハーピストのNatsukoをゲストに呼んで大盛り上がりだったし、韓国の若手トリオ、リッチマン&グルーヴ・ナイスの芯の通ったサウンドも聴きごたえがあった。ユーモラスに戦前ブルース系のナンバーを繰り出したザビエル大村、スウィング感が気持ちよいThe Boogie Rocketsなどなどラインアップは実に多彩で飽きさせることはなかった。


Nacomi

手作り感に溢れ、開放感に満ちた雰囲気が居心地のいいフェスだった。ホールで味わうコンサートにはない、いい意味でのユルさが魅力と言えるだろう。今後も堺の街をブルースで元気づけていってほしいものだ。

陶守正寛(文・写真)


【フェスティバル情報】
2023年 第8回 堺ブルースフェスティバル
日時:2023年9月17日(日)、18日(月・祝)
会場:Minaさかい(堺市役所前・堺地方合同庁舎前)、町のリビングここいい、BAR PICCOLO DUE、Music Cafeピアノン、ヒビノビア、Gordon’s Cafe & Bar、みやぶたと沖縄料理・沖炭、moa & BAUL Stage (COMS)
主催:堺ブルースフェスティバル実行委員会
後援:堺市、FM COCOLO、(一社)大阪府宅地建物取引業協会、(株)サカイ引越センター、(株)JR西日本コミュニケーションズ、HOUSE OF JAZZ、三国ヶ丘FUZZ
公式サイト:sakai-bluesfestival.com

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