ブルース&ソウル・レコーズ

【特集:伝えておきたいブルースのこと】㉖ブギ魔人と稲妻ブルース

ワン&オンリーのギター・ブギとディープ・ブルースでデトロイトから気炎を上げたジョン・リー・フッカー

 アメリカ黒人にとって南部とはどのような存在なのか。『アメリカの息子たち  二十世紀黒人作家論』(大井浩二訳/研究社/1971年[原書は68年刊行])の中で、著者のエドワード・マーゴリーズは南部を離れ北部へと向かった黒人に関して「人間が生まれた土地を離れるのは、ただ単に憎悪からだけでなく、故郷を愛しつづけていたいという理由も働いている」とし、アメリカの社会評論家、カルヴィン・ハーントンの発言を引いている。

「黒人が南部のよりおおらかな生活とか、より根深い神秘から切りはなされているという事実は、彼らを『南部』から遠ざけるどころか、いっそう緊密に『南部』へしばりつけるという結果を生んでいる」
 厳しい差別のある南部を離れ北部へと移住した黒人たちが、つらい思い出のある故郷を思わせるダウン・ホーム・ブルースに焦がれる。右の一文はその理由のひとつとなるかもしれない。

 1948年にデトロイトで録音されたジョン・リー・フッカーの〈ブギ・チレン〉は翌年R&Bチャート1位、続くスロー・ブルース〈ホーボー・ブルース〉は同5位を記録した。前者は唯一無二のギター・ブギで斬新であるが、二曲ともダウン・ホーム極まりない。

 テキサスのライトニン・ホプキンスは同じ年に〈〝T〟モデル・ブルース〉を同8位に送り込み、50年と52年にもトップ10ヒットを計3曲放つ。いずれも自身のエレキ・ギターのみを伴奏とした、ディープなテキサス・ダウン・ホーム・ブルースだ。

 シカゴからはマディ・ウォーターズが1948年に〈アイ・フィール・ライク・ゴーイング・ホーム〉で初の全国ヒットを飛ばしたが、これもまたエレキ・ギターによる弾き語りナンバーで、ミシシッピの空気を運ぶものだった。これらのヒットを受けて、1950年前後には同種のブルースが各社で録音された。

 ブギ・ウギのリズムに乗った都会風のリズム&ブルースがまぶしく輝いていた一方で、ダウン・ホーム・ブルースも人々の心に深く刺さっていた。


Anthology of the Blues “Mississippi Blues” Archive Series Vol.9

(Kent KST 9009) [1969]
ロサンゼルスのレーベル、モダン・レコードが1952年に録音したミシシッピ・ブルース集。ボイド・ギルモア、ヒューストン・ボインズ、チャーリー・ブッカーらによる、ダウン・ホーム・ブルースを収録


ニックネームのごとく閃光のような鋭いギターで魅了したテキサス・ブルースマン、ライトニン・ホプキンス

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