2024.10.26

【LIVE REPORT】なにわブルースフェスティバル2024 Day1 ニッポンのブルースのルーツを浴びた3日間

なつかしい×あたらしい なにわブルースフェスティバル2024
1日目/2024年9月14日(土) 大阪なんばHatch


◆ロビーをあっためたWelcome Artist
有山じゅんじ、清水興らによるセッション。写真は2日目(★)

9月14日。まだ夏の暑さが続く大阪で、熱いフェスは幕を開けた。
“Sittin’ On Top Of The World”のメロディに乗せ「今年もまた9月になれば♪」と有山じゅんじの声がロビーに響くと取り巻く人たちから歓声が起きる。またここに集まれた幸せを実感する瞬間だ。

今年から3日間の開催となっても、開場した瞬間からお楽しみが始まるのは変わらない。訪れた人を迎えるのは、有山じゅんじ清水興と、玉置賢司(NPO法人なにわブルージー代表)、そしてフィドルを手にしたクリエイターの張間純一。玉置と張間はずっとポスターのモデルも務めてきた、いわばフェスの顔だ。ここに初日はスティックを手にした岡地曙裕、2日目は岡地に加えピアニカを持った早崎詩生も華をそえた。

SOUTHSIDE JAZZ GARAGE

ただし今年の有山・清水ユニットはこの1曲だけ。1日目・3日目はSOUTHSIDE JAZZ GARAGE、2日目にはジャグ・バンドの激団モンゴイカがWelcome Artistとしてお客さんを迎えた。

SOUTHSIDE JAZZ GARAGEとはホールの1階にあるmusic bar S.O.Ra.で行われているイベントの名前らしい。Big Mouth Brass Bandで活躍するトランペットの永野雄己はじめ、トロンボーン、チューバ、ドラムス、キーボードという編成で、ストリートを感じるファンキーでラフなエネルギーに、がっつりつかまれた。

集まっていた人たちも皆、晴れ晴れとした顔をしている。さぁ準備万端だ。

◆出し惜しみしません!1番手は木村くんと有山くん(木村充輝・有山じゅんじ)
息もぴったりの木村充輝と有山じゅんじ

オープニングは予想をいい意味で裏切って、木村充輝と有山じゅんじによる木村くんと有山くん。MCの柿木央久が「出し惜しみしません」と胸を張ったが、今回は3日間とものっけからベテラン登場で会場はどよめいた。タイムテーブルは発表されていない。思わぬ顔合わせもあり、今年は特に最初から最後まで目が離せなかった。

「何やろか?」と視線を交わしていた2人が、<嫌んなった><梅田からナンバまで>を歌うともなく歌い出す。「キムチ、やろか」と、一度聞いたら忘れられない<キムチはできるだけ辛いほうがいい>が始まる。誰もが齢を重ねれば、こんな空気をつくれるわけじゃない。

次に「なんか聞きたい歌ある?」と観客に問いかけ選んだのは憂歌団の<街のほこり>。ラストもリクエストに応え<大空よ>を。「あんまり歌ってないなぁ」と2人は顔を見合わせていたが、そんな1曲を大事にしてきたお客さんがいることがすてきだ。

「みんなに会えて、いろんな人に会えました」と茶目っけたっぷりに木村は笑ったが、きっとお客さんもそれぞれに歌と一緒に思い出す人がいただろう。ずっとずっと同じ空間にいたくなるようなふくよかな時間だった。

◆それぞれのブルースが炸裂
Shoka Okubo Blues Project II

2番手には一転、STVのようなギターが炸裂するShoka Okubo Blues Project II(大久保初夏、 芹田珠奈、 川上真裕美)。ドラムが代わりギターの大久保初夏、ベース芹田珠奈との女性3人によるトリオになった。それにより、ぐっとハードになった印象だ。ドット柄のポップなワンピースのキュートさとは裏腹に、それぞれの見せ場を意識しながら強気なプレイで駆け抜けた。

久米はるき(左)と南あやこ

続いて、このフェスにはずっと出演しているOSAKA ROOTS。「今年はよく寝ました!元気なわれわれを見てもらえてうれしい」とギタリストの久米はるきが笑う。実際、この日のOSAKA ROOTSは誰の目から見ても怖いモノなしだった。どこまでも駆け上るような<Lookin’Good>に、こういう理屈抜きのパッションを浴びたくてブルース聴いてるんだよと言いたくなった。

◆続いていく歌を感じるNBF
初出演の森川美穂

森川美穂はキーボードの安部潤とともに初出場。80年代にアイドルから出発し、現在は大阪を拠点にさまざまな分野で歌い続けているシンガーだ。この日は代表曲のアニメ主題歌<ブルーウォーター>に始まり、<デスペラード><ナチュラル・ウーマン>など5曲を披露。本フェスのハウス・バンドとしておなじみの清水興(bs)、井上央一(gt)、長尾琢登(dr)がサポートした。

リクオ

たった一人でステージに上りグランドピアノに向き合ったのがリクオ。憂歌団の<ジェリー・ロール・ベイカー・ブルース>に続き、彼のテーマソングのような<ランブリンマン>に自然と手拍子が起こる。

ここで吾妻光良が呼び込まれ「同世代に向けて」とひと言添えてリクオのオリジナル<満員電車>を。これだけでも贅沢だが、さらに先ほど気合いの入ったステージを見せたOSAKA ROOTSのギタリスト久米はるきが呼び込まれたのには驚いた。しかも曲は友部正人の歌った<ブリング・イット・ホーム・トゥ・ミー>。世代も次代も超える歌うたいリクオの真骨頂を感じうれしくなった。2人のテキサス系ギターバトルももちろん楽しみながら、歌は続いていく。

左からリクオ、吾妻光良、久米はるき
◆ブルースのスリルを堪能!
blues.the-butcher-590213と山岸潤史の共演

たびたび共演してきたblues.the-butcher-590213(永井“ホトケ”隆、 沼澤尚、 中條卓、 KOTEZ)と山岸潤史だが、今回は<Crosscut Saw>はじめ山岸のアルバート・キング魂が炸裂! とりわけマイク・ブルームフィールドとアル・クーパー『フィルモアの奇跡』に収録されていた<はげしい恋はもうたくさん(Don’t Throw Your Love On Me Strong)のスリルには息を飲んだ。この10月には永井ホトケ隆、山岸潤史によるデュオ・アルバム『…still love in Blues』が発表されるが、一途にブルースを演奏し続けた人たちの情熱がこのフェスの要になっているのは間違いない。

◆ナオユキから金子マリ・KenKenへ
ナオユキ

今年も幕間には、スタンダップ・コメディアン、ナオユキ。雑居ビルのあるいはガード下の安酒場、暑い夏の風景を舞台に一所懸命であるがゆえに滑稽な人たちを描くネタは何度聴いても新鮮。私たちの中に新しいドラマを呼び覚ましてくれる。

BIG HORNS BEEをバックに歌う金子マリ

ナオユキの後ろでセッティングするベーシストのKenKenがナオユキのネタに声を出して笑い、ベースを弾いてフォローする。そのKenKenが共演するのが、3日間出演するBIG HORNS BEE(金子 隆博、 小林太、 小澤篤史、 河合わかば、 織田浩司、 石川周之介)。ギタリストには韻シストのTAKU(gt)とTAROW-ONE(dr)というなんとも粋な顔ぶれだ。そしてヴォーカルは金子マリ。<最後の本音>や拡げた両手に会場全体が包み込まれていく<ありがとう>。彼女もまた過去から未来へと“歌は続く”を体現する一人。それが永遠の歌姫と呼ばれる由縁だろう。マリさん、今年も歌ってくれてありがとう。

◆大きなステージでバッパーズ!
吾妻光良&ザ・スウィンギン・バッパーズ

さぁ、1日目のトリは吾妻光良&ザ・スウィンギン・バッパーズ! 大きなステージで、やっぱりバッパーズは映える。この日は<俺たち相性いいぜ><150-300>といったおなじみのナンバーに混じり、11月20日発売の新譜『Sustainable Banquet』から新曲<打ち上げで待ってるぜ>も披露。短い時間だったが、大きなアクションでリードする吾妻を中心に、メンバーも思いっきり楽しんでいた。

1日目のアンコール

アンコールは出演者総出で3日間とも、石田長生ヴァージョンで歌われる<The Weight>と<Iko Iko>。石田長生に寄せる思いは本フェスがこれからも持ち続けるであろう柱のひとつだ。

BIG HORNS BEEとバッパーズのメンバーで上手いっぱいのホーン・セクション、岡地曙裕を中心にセッションし合う2台のドラム、ピアノはピアノで連弾が始まっているし、あちこちで起きるドラマを追いかけるのに目が忙しい。勢いあまって有山が転倒したのもご愛敬。お決まりのアンコールを超えた人と人とのセッションを目撃できるのも、このフェスならではだ。

文・妹尾みえ 写真・FUJIYAMA、Mie Senoh(★のみ)
取材協力:NPO法人なにわブルーンジー、グリーンズ、ジョイフルノイズ

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