2023.6.2

【ゴスペル入門 Vol.4】基本中の基本の用語を知っておこう! ゴスペル頻出用語辞典

UNSPECIFIED - circa 1970 Photo of GOSPEL (Photo by David Redfern/Redferns)

今回の【ゴスペル入門】や佐々木秀俊さんの連載『ゴスペル・トレイン』にもよく出てくるゴスペル関連用語を纏めました。ゴスペルの世界への理解を深めていく際に必ず出会うものばかり。ぜひご参照ください。


エヴァンジェリスト / evangelist
不特定多数の教会や街角の伝道集会で説教を行う、主にアメリカの大衆伝道師を指す。ラジオやテレビなどメディアを使うことも多く、特にテレビ伝道師は「テレヴァンジェリスト」と呼ばれている。自身のギター伴奏でゴスペルを歌い説く説教師を「ギター・エヴァンジェリスト」と呼び、ブラインド・ウィリー・ジョンスンなどが有名。

カルテット / quartet
4パートのハーモニーからなるヴォーカル・グループのこと。ベース、バリトン、テナーからなり、バリトンとテナーは1人ないし2人、という4~6人編成で歌われることが多い。カルテットという編成では、すでに19世紀半ばにミンストレル・ショーなどで歌われていたというが、ゴスペル・カルテットの場合は、主に1930年代から50年代に活躍したグループを指すことが多い。

クワイア / choir
聖歌隊。現在のゴスペルのメインストリームともいえるクワイアの起源は19世紀まで遡るが、現在に繋がる大きな動きとして、公民権運動の時期に結成された各地のクワイアの存在が大きい。また60年代にはアレックス・ブラッドフォードや、ジェイムズ・クリーヴランドの指導によって、新しいクワイアのスタイルが生み出され、70年代以降のクワイアの隆盛へと繋がった。マス・クワイアと呼ばれる100人以上からなるクワイアもある。

コール&レスポンス / call & response
呼びかけに対して応えること。黒人音楽の特徴として語られることが多く、ゴスペルでもリード・シンガーのフレーズをバック・コーラスが復唱したり、異なる言葉で返したり、さまざまなコール&レスポンスがみられる。

黒人霊歌(ニグロ・スピリチュアルズ)/ negro spirituals
ニグロ・スピリチュアルズ、またはスピリチュアルズと呼ばれる、アフリカからアメリカへとつれて来られた奴隷たちによって作られ歌われた宗教歌。奴隷たちはアフリカからもたらされたと考えられる独自の旋律でキリストの教えなどを歌い、それが黒人霊歌と呼ばれるようになる。奴隷解放後の19世紀後半に、フィスク大学の合唱隊、フィスク・ジュビリー・シンガーズが黒人霊歌をレパートリーとし、白人社会にも広まった。ゴスペルのルーツ。

ゴスペル / gospel
音楽ジャンルとしてのゴスペルの起源は、19世紀に遡るという説がある一方、ゴスペル作曲家トーマス・A・ドーシーの登場以降によって広まった曲をゴスペルと呼ぶ場合もある。広い意味では、ブルースやジャズなど世俗の音楽の要素が、黒人霊歌と交じり合って生まれた音楽を指す。黒人だけでなく、南部の白人によって歌われたゴスペルもあり、それは「サザン・ゴスペル(southern gospel)」と呼ばれる。

ゴスペル・ミュージカル / gospel musical
文字通りゴスペルをフィーチュアしたミュージカル。30年代から黒人霊歌を使用したものはあったが、“ゴスペル”ではマリオン・ウィリアムズとアレックス・ブラッドフォード主演の『Black Nativity』(1961)が最初といわれる。その後『Purlie』『Mama, I Want To Sing』などが制作された。

ゴスペル・パールズ / Gospel Pearls
1921年にナショナル・バプティスト・コンヴェンションによって出版された歌集。当時黒人教会などで親しまれていた宗教歌をまとめたもので、この時はじめて、新しい宗教音楽を指す言葉としてゴスペルが使われた。ワッツ博士の讃美歌や、チャールズ・A・ティンドリーの霊歌など163曲が収められ、多くのゴスペル・シンガーがここに収録された曲を歌っている。

ゴスペル・ハイウェイ / gospel highway
ゴスペル・シンガー/グループが、各地の教会を回る巡業ルートのこと。多くのシンガーがゴスペル・ハイウェイのことを語っているが、移動のつらさと、とくに南部での人種差別に苦しんだことなどに触れている。ソウル・スターラーズのR.H.ハリス師は巡業先での誘惑(女や酒)に嫌気がさし、スターラーズを脱退したといわれる。

サーモン / sermon
説教。黒人教会では“歌う説教師”(シンギング・プリ―チャー)も多く、アリサ・フランクリンの父、C.L.フランクリン師は、説教を収めたレコードを何十枚と発表している。

ストアフロント・チャーチ / storefront church
教会の小さな店先教会。個人信徒の多い福音派教会では聖堂を建てる資金がなかったため、街なかの空き店舗などを利用して教会とした。都会に住む黒人コミュニティの中核として機能し、ここから音楽キャリアをスタートさせた黒人ミュージシャンも多い。

チャーチ・レッカー / church wrecker
“教会壊し”と訳されるが、すなわち歌によって教会の会衆を熱狂させることのできるゴスペル・シンガーを指す。

リング・シャウト / Ring Shout
黒人奴隷が行っていた、輪になって手を叩きながら歌い踊る儀式を指す。歌はコール&レスポンスで行われる。リング・シャウトがゴスペルに与えた影響も大きいと考えられている。

レヴァレンド / Reverend
聖職者の名前に付ける尊称。「~師」と訳されることが多い。略字はRev.。なお、米国ではプロテスタント各派で、牧師、聖職者をパスター(Pastor)とも呼ぶ。ビショップ(Bishop)は主教/監督と訳される。

ワッツ・ヒム / Watts Hymn
1674年生まれの英国人、アイザック・ワッツ博士が編んだ讃美歌集に掲載された讃美歌を指す。ワッツ博士は、世界で初めて英語で書かれた讃美歌集を編んだことで知られ、そこに収録された曲は黒人の間でも長く歌い継がれている。


宗派(denomination)

サンクティファイド教会(派) / Sanctified
サンクティファイド(聖別)運動によって興ったホーリネス派やペンテコステ派などの総称。

チャーチ・オブ・ゴッド・イン・クライスト(COGIC) / Church Of God In Christ
通称コージック。1907年チャールズ・メイスンが興したペンテコステ派の最大教団。信徒は圧倒的に黒人が多く、現在アメリカ黒人教会の主流となっている。

バプテスト教会(派) / Baptist
プロテスタントの一教派。幼児洗礼ではなく自らの信仰告白でバプテスマ(洗礼)を受けることを主張する。アメリカには英国から1639年に伝播、黒人信者も増やしていき、現在米国最大の宗派となっている。

ペンテコステ派 / Pentecost
ホーリネス派から19世紀末に派生。類似点は多いが、信徒言行録第二章にある聖霊降臨(ペンテコステ)そのままに、回心によって聖霊の洗礼を受け、異言(忘我状態で特殊言語を話す)、聖癒などのカリスマ能力を得ると説くのが特徴。ホーリネス教会同様、礼拝では歌と踊りが大半を占め、楽器も使用する。

ホーリネス教会(派) / Holiness
19世紀末の米国で、ウェスリーの開教精神への回帰を求めメソジスト教会から分離した一派。「キリスト者の完全」を求め生活様式を律し(「聖別される」)、聖霊による導きを体験して聖化されることを重視する。礼拝には歌と踊りが多く用いられ、信徒は歌い踊り叫び、気絶することもある。この一派が初めて礼拝に楽器を使用するようになった。

メソジスト教会(派) / Methodist
18世紀英国のジョン・ウェスリーによって興されたプロテスタントの一教派。霊感による宗教体験を重視、野外巡回説教による信仰覚醒運動が特徴。1784年米国に伝播、現在バプテスト教会と並ぶ二大福音派教会となった。全世界の信者の7割が米国人。

文:BSR編集部

(初出:『ブルース&ソウル・レコーズ』2011年4月号No.98)

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