1920~30年代のジャズやブルースの復刻で知られる英国のレーベル、フロッグからボビー・リーキャンにスポットを当てたCDが発売された。
バンジョーとギターの名手、ボビー・リーキャンの名前に即座に反応できる人はかなりの「戦前ブルース&ジャズ」のファンであろう。ハーモニカ名手ロバート・クックシーとの連名で1926年に発表した“Need More Blues”が、ロバート・クラムのイラストを用いたLP『Harmonica Blues』(Yazoo 1055)に収録されていたことを思い出す人もいるかもしれない。LP時代にはマッチボックスやコレクターズ・クラシック、CD時代にはドキュメントといったレーベルでアルバムが組まれてきたように、その巧みなテクニックはファンの間で注目されてきた。リーキャンとジャズ・ギタリストのチャーリー・クリスチャンのプレイの類似性を唱える評論家もいるという。
今回フロッグから発売された『Suitcase Breakdown』には、1926年から31年までにヴィクター、コロンビア等に吹込んだ音源が収録されている。ロバート・クックシー(ハーモニカ)、アルフレッド・マーティン(ギター)とのサウス・ストリート・トリオや、ウォッシュボードを加えたバンドによるもの、ギター弾き語りのソロ演奏、ファッツ・ウォーラーがパイプ・オルガンを弾くアーリー・ジャズ・コンボでの録音、女性シンガーの歌伴など、多種多様な形態での演奏が楽しめる。
フィラデルフィアに生まれたリーキャンは1947年には亡くなっており、その写真は一枚も見つかっていない。謎多き人物であるが、ライナーノーツには近年の調査によって判明した事実を元に、リーキャンに関する現時点での最新の情報が記されている。ぜひ本CDで知られざるギター・マエストロに触れてほしい。
*ブルース&ソウル・レコーズ No.144(2018年10月25日発売)にて本CDについての記事を掲載予定です。
BOBBY LEECAN Suitcase Breakdown (Frog DGF 86)
www.frog-records.co.uk/