2018.8.12

【特集:伝えておきたいブルースのこと】⑮〝クサい〟ジャズにコロり

ブルースと分ち難いアーリー・ジャズ
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BLACK MUSIC REVIEW 1991年1月増刊 ブルース・レコード・ガイドブック 1991改訂版 ブルース・インターアクションズ刊

ブルースに夢中になり始めた頃に手にした『ブルース・レコード・ガイド・ブック』、そこに佐々木健一氏責任監修による「ジャズ」という章があった。ブルースのガイドになぜジャズが? ルイ・アームストロング、カウント・ベイシー、デューク・エリントン、ビリー・ホリデイなど、ジャズの歴史に必ず出て来るような人もいたが、まったく耳にしたことのない作品が並んでいた。ブルースとジャズがどれほど近くにあるのかまったく知らずにいたため、驚くとともに、そこで紹介されていた1920〜40年代の〝クサい〟ジャズにすっかり引き込まれてしまった。

 ラグタイム/ブルース・ギタリストのブラインド・ブレイクが1928年にシカゴで行なったセッションには、ルイ・アームストロングのホット・ファイヴ/ホット・セヴンの一員でクラリネット奏者のジョニー・ドッズ(1892-1940)が参加していた。そこで生まれた作品は、ブルースとジャズの異種格闘技戦という赴きはまったく無く、両者の息もぴったりな、ブルーで粋なグッド・タイム・ミュージックだった。

 ニューオーリンズの音楽一家に生まれたロニー・ジョンスンは、ヴァイオリン、ギター、マンドリン、バンジョー、そしてピアノも演奏する、マルチな才能に溢れた人物。早くも1917年にはヨーロッパで演奏をしている。1925年の初録音以降、様々な演奏者と録音を行なっており、その中にはルイ・アームストロング(ジョニー・ドッズも一緒)、デューク・エリントンもいた。自身のギター伴奏のみのブルースはロバート・ジョンスンに影響を与えたことでよく知られているが、それも彼の多彩なスタイルのひとつでしかなかった。

 ベッシー・スミス、マ・レイニー、テキサス・アレグザンダーなど、レコーディング初期のブルース・シンガーたちのバックを「ジャズ・バンド」が務めることも多かったし、主に1920年代に録音を残したケンタッキー州ルイヴィルのジャグ・バンド、ディキシーランド・ジャグ・ブロワーズは、同時代の「ジャズ・バンド」とも共通するスタイルを持っていた(彼らもジョニー・ドッズと共演がある)。

 これらはほんの一例にすぎず、ジャズだ、ブルースだと分ち難い作品は本当に多い。LP時代にはハーウィン(Herwin)、CDではフロッグ(Frog)、ジャズ・オラクル(Jazz Oracle)といったレーベルが、主に1920〜30年代の〝クサいジャズ〟を復刻している。


The Immortal Johnny Dodds
(Milestone 2002) [1967]
[上]1920年代シカゴのサウス・サイドを賑わした“クサいジャズ”が楽しめる1枚。ブラインド・ブレイクとの共演曲〈C.C.ピル・ブルース〉の他、ラヴィ・オースティン&ハー・ブルース・セレネイダーズ、ジミー・ブライスのラガマフィンズ等のバンドに参加した作品や、タイニー・パーハム(ピアノ)とのデュエット、人気女性ブルース・シンガー、アイダ・コックスの伴奏者としての録音など、様々なアンサンブルを収録


ジョニー・ドッズの数少ないポートレイトの一枚

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