2023.6.1

「ヒップホップ・ジャーナリズムのゴッドファーザー」と呼ばれた黒人批評家による博覧強記の代表作、『フライボーイ2──ブラック・ミュージック文化論集』好評発売中!

本邦初訳となる「ヒップホップ・ジャーナリズムのゴッドファーザー」と呼ばれた黒人批評家による博覧強記の代表作!
もっとも最先端の黒人文化ジャーナリズムとアフロ・スタディーズにとっても欠かすことのできない一読すべき一冊


ジョージ・クリントンの “メタなバカさ” がアミリ・バラカの “変わっていく同じもの” へと放り込まれフリー・ジャズもマイケル・ジャクソンもギャングスタ・ラップもジェイムズ・ブラウンもトニ・モリスンも、すべては同一線上で語られる──

ヒップホップは、逆さまの資本主義/ヒップホップは、植民地主義の逆再生/ヒップホップは、黒人化された衝撃の未来に送り込まれた、/奴隷主たちが作り出した世界/ヒップホップは、地下からの略奪品、/喜んで他のすべてを弄ぶ/ヒップホップは我らが文化の消費と商品化、/潜在意識の誘惑とアメリカン・ドリーム機械の/黒い美的副産物──本書所収「ヒップホップとは何か?」より

2021年に惜しくもこの世を去ったブラック・ミュージック界の最重要批評家、グレッグ・テイトの評論集が刊行されました。
日本国内では初訳となる本書では単なる音楽評論にとどまらず、黒人社会が抱える諸問題や黒人文化を構成してきた多彩なトピックについても包摂的に捉え、フリー・ジャズやブルース、ファンクが培ってきた黒人の文化的イデオロギーをヒップホップと接続し、一本の道筋を示しています。
アメリカを取り巻く「ホワイト至上社会」の問題に異を唱える一貫した姿勢は、混乱を極める現在にこそ必要とされるものであると言っても過言ではありません。
「ヒップホップ・ジャーナリズムのゴッドファーザー」と呼ばれた氏の残した数々の硬派かつ知的な鋭い批評は、BLM関連の問題に始まる昨今の暗澹たる情勢を紐解く一助となることでしょう。


[商品情報]
書名:フライボーイ2──ブラック・ミュージック文化論集
著者:グレッグ・テイト
訳者:山本昭宏、ほか
発行:株式会社Pヴァイン
発売:日販アイ・ピー・エス株式会社
発売日:2023/5/30
判型:A5判上製
ページ数:480頁
定価:本体3,980円+税
ISBN:978-4-910511-46-7
公式HP:www.ele-king.net/books/009181/

[目次]
イントロダクション――欲望、あらゆる物事(ブラック)

第一部 黒人男性の展示会

追悼:アミリ・バラカ/ウェイン・ショーター/ジミ・ヘンドリックス/ジョン・コルトレーン/釣りに行く──レスター・ボウイを偲んで/ザ・ブラック・アーティスツ・グループ/ブッチ・モリス/チャールズ・エドワード・アンダーソン・ベリーと私たちの未来史/独学の砂男、ロニー・ホーリー/マリオン・ブラウンとジンジ・ブラウン/塵埃のダークな天使──デイヴィッド・ハモンズとストリートの超絶主義/ビル・T・ジョーンズ──舞踏における戦闘的振り付け/ゲイリー・シモンズ──コンセプトの爆撃者/ヴィジョンの持続性──ストーリーボード・P/アイス・キューブ/ウィントン・マルサリス──ジャズの改革者/ソーントン・ダイアル──自由、ブラック、そして世界の暗闇を照らすこと/ケヒンデ・ワイリー──黒人の男らしさをめぐって/ラメルジー──地下鉄のグラフィティ、そして偶像破壊のサムライ/リチャード・プライヤー──プライヤー健在/追悼:リチャード・プライヤー/追悼:ギル・スコット=ヘロン/鏡のなかの男──追悼:マイケル・ジャクソン/マイルス・デイヴィス

第二部 笑う彼女は意地悪だけど、魅力的

ボーン・トゥ・ダイク──笑うシスターへの我が愛、意地悪そうでクィアで印象的なシスター再び/ジョニ・ミッチェル──ブラック&ブロンド/アジーリア・バンクス──『ファンタシー』/シャーデー──ブラック・マジック・ウーマン/もしジェイムズ・ブラウンがフェミニストだったら/イタバリ・ニジェリ著『最後の農園』について/カラ・ウォーカーについて話そう/空間、時間、芸術の境界線にいる女性たち──カンディダ・ロメロ『リトル・ガールズ』をめぐる考察/アート界のホープ、エレン・ギャラガー/黒と抽象の詩人に贈る/“ギクユ神話と宇宙から来た有色のライオット・ガールの戦い”──ワンゲチ・ムトゥ特集/象形文字のゾンビ・パレードに参加しよう──デボラ・グラント/第二幕のビョーク/キュレーター、セルマ・ゴールデンの挑戦

第三部 やあ暗闇、私の懐かしいミーム

ウォール街占拠に黒人女性が少なかった理由トップ10+4/ヒップホップとは何か? ドリーム・ハンプトン、対話的インスピレーション、そしてミシェル・ンデゲオチェロがミシェル・ンデゲオチェロであるために/諜報データ──ボブ・ディラン『ラヴ・アンド・セフト』/三〇歳になったヒップホップ/愛とクランク──アウトキャスト『スピーカーボックス/ザ・ラヴ・ビロウ』/白い自由──エミネム/ウー・ダニット──ウータン・クラン『ウータン フォーエヴァー』/アンロック・ザ・トゥルースvsジョン・ケージ

第四部 スクリーニングス

スパイク・リー『バンブーズルド』/『ザ・マック』的なるもの──ブラックスプロイテーション映画の語法/セックスとニグロシティー──ジョン・シングルトン監督の映画『サウスセントラルLA』/白塗りのリンカーン──スーザン・ロリ・パークス作『トップドッグ/アンダードッグ』におけるジェフリー・ライトとドン・チードル/ドキュメンタリー『ブラックパワー・ミックステープ』(二〇一一)──ふたたび語られる闘争の時代

第五部 人種、性、政治トリック、文芸

巨匠、クラレンス・メイジャー/大西洋の音──キャリル・フィリップス著『アトランティック・サウンド』/アポカリプス・ナウ──パトリシア・ヒル・コリンズ著『ブラック・セクシャル・ポリティクス』、トーマス・シェヴォリー著『ノートリアスHIV』、ジェイコブ・レヴェンソン著『秘密の伝染病』/血と橋──一九九九年、ニューヨーク市警とジュリアーニの抗議運動/“ニガ” チュード/脅威の三人──ジェリー・ガフィオ・ワッツ著『アミリ・バラカ』、ヘイゼル・ローリー著『リチャード・ライト』、デヴィッド・メイシー著『フランツ・ファノン』/底辺のえさ箱──桐野夏生著『アウト』/高台を登る──マリーズ・コンデ著『風の巻く丘』/雑種惑星の憂鬱──ゼイディー・スミス著『ホワイト・ティース』/スキン・トレードの冒険──リサ・ティースリー著『グロー・イン・ザ・ダーク』/ジェネレーション・ヘックス──ジェフリー・レナード・アレン著『背中の下のレイル(Rails under My Back)』/地下に潜る──ゲイル・ジョーンズ著『モスキート』/審判の日──トニ・モリソン著『ラヴ』とエドワード・P・ジョーンズ著『地図になかった世界』について/ブラック・モダニティと笑い、あるいは “N*g*a” はいかにしてジョークを手に入れたか?/カラハリのけんけん遊び、あるいは二〇巻におよぶアフロ・セントリックなフューチャリストのマニフェストのためのノート

『フライボーイ2』日本語刊行に寄せて 押野素子

[著者プロフィール]
グレッグ・テイト(Greg Tate)
1957年10月14日、アメリカはオハイオ州デイトン市に生まれる。本名はGregory Stephen Tate。ハワード大学でジャーナリズムを映画について学ぶと、『ヴィレッジ・ヴォイス』への寄稿をきっかけに、ニューヨークを拠点とし、批評家としての活動をはじめる。白人至上主義の世界に抗う、その先鋭的な批評はたちまち評判となって、80年代半ばには、主に黒人文化に関する批評家としては第一人者となる。そして、『ニューヨークタイムズ』、『ワシントンポスト』、『ダウンビート』、『ローリング・ストーン』、『ヴァイブ』など複数の雑誌や新聞にも寄稿、有名なヒップホップ専門誌『ソース』は、テイトを「ヒップホップ・ジャーナリズムのゴッドファーザー」と呼んだ。1992年には初の評論集『Flyboy in the Buttermilk』を上梓する。その2作目が本作『Flyboy 2』となる。テイトは執筆活動の傍ら、いくつかのバンドでフリー・ジャズ、ファンク、サイケデリック・ロックなどの音楽活動も続けた。他方では、白人優遇のアメリカの音楽産業への異議申し立てとして、〈Black Rock Coalition〉という連合を組織した。また、2003年にテイトが編集した『Everything But the Burden』は、黒人芸術の白人による流用をテーマにしている。2009年にはコロンビア大学ジャズ研究センターの客員教授、2012年にはブラウン大学のアフリカーナ研究客員教授を務めている。2021年12月7日、64歳で永眠すると、その夜、ハーレムのアポロシアターは追悼の意を込めて彼の名前を表示した。

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