RECORD
2018.5.6

THE STONY ISLAND BAND / Stony Island

世界初CD化の充実サントラはブラック・ミュージックのフルコース
the-stony-island-band-stony-island

 レア・グルーヴ的観点から評価されてきたという本作は世界初CD化というのが信じがたいほどの充実盤だ。TK傘下のグレイズから1978年にリリースされた本作は音楽青春映画『Stony Island』のサントラとして制作された。しかし映画はお蔵入りし、2012年にDVDで初めて公開されたという。映画の内容は岩間慎一氏によるライナーノーツに詳しい。本盤は映画の流れに合わせて曲が並ぶというが、その流れが実に見事でアルバム一枚を通してひとつの物語を紡ぎ出しているかのようだ。

 アルバムは70年代のブラック・ムーヴィ・サントラの常套アレンジ、緊張感に満ちたハイ・ハットとギターのカッティングで始まる。そこからホーンが飛び出し、ハンド・クラッピングと女声コーラスが加わり、歌入りファンクへとなだれ込む。この冒頭の一曲で一気に引き込まれる。以下、アープ・シンセと電子ピアノの浮遊感が心地いいジャズ・ファンク、ブルージーなギターが冴えるインスト、ロニー・バロンが歌うゴスペルではニューオーリンズ・ジャズ調になるなど、黒人音楽の様々な要素が満遍なく取り入れられている。また、バラード・を歌うテニスン・スティーヴンスの歌唱にはダニー・ハサウェイの影も見え、そこから現在のR&Bシンガーにつながる道も見えてくる。まさにこの1枚で時代を超えたブラック・ミュージックのフルコースが味わえるのだ。デイヴ・マシューズ、ジーン・バージら、ジャズ/R&Bの名作を生み出してきた面々が揃い、スコアの演奏にはハイラム・ブロックら名手たちの名前もある。シカゴ・ブルース/ゴスペル・シーンで活躍するクリス・ジョンスンも参加している。(濱田廣也)

NEWS

error: Content is protected !!