文/濱田廣也(ブルース&ソウル・レコーズ)
軒並みソールド・アウトとなったブギ連のライヴ・ツアー。「ブギ連だ!みんなに自慢しよう!」というキャッチコピーの通り、自慢されて悔しい思いをした人もいたことだろう。その悔しさが完全に払拭されることはないかもしれないが、溜飲をだいぶ下げてくれるライヴ・アルバム『ブギる心』が発売された。
セカンド・アルバム『懲役二秒』発売後に行われた2024年のツアー「第2回ブギる心」。今回発売のライヴ・アルバムには10月16日の京都《磔磔》での公演から7曲が選ばれている。
名ライヴ・ハウスとして知られる《磔磔》には伝説的なブルースマンやソウル・シンガーが多数出演してきた。ブギ連のインスピレーション源の一人、ブルースの巨人ジョン・リー・フッカーも1984年の来日時に出演している。いわば“日本のブルースの聖地”のひとつといえる《磔磔》での公演が収められた本作は、2枚のアルバム『ブギ連』『懲役二秒』と並んで、日本のブルース史に刻まれるべき一枚だと早くも断定したい。
ブギ連の二人、内田勘太郎(ギター)と甲本ヒロト(ヴォーカル/ハーモニカ)はそれぞれに軸足を置く活動の場がある。ブギ連としての活動自体が即興的であり、2枚のアルバムもその場で作り上げたライヴ感のあるものだった。そして実際のライヴではさらに即興性と自由度が高まる。『ブギる心』の冒頭に収められた《ブギ連ジャイブ#1》は、即席ブルース・ジャムといった内容で、二人が親しんできた主に1920〜50年代のブルースのフレーズが次々と繰り出される。本誌No.180のインタヴューで甲本はメンフィス・ジャグ・バンドのウィル・シェイドのハーモニカについて言及し、1920/30年代のジャグ・バンドの演奏をジェットコースターに例えていたが、5分を超えるこの曲も内田のギターと甲本のハーモニカの丁々発止がまさにジェットコースターのように上昇下降を繰り返すインストゥルメンタル・ナンバーだ。
収録曲は『ブギ連』から3曲(〈ブルースがなぜ〉〈ナマズ気取り〉〈ブギ連〉)、『懲役二秒』からも3曲(〈やっとられん〉〈49号線のブルース(スリーピーとハミー)〉〈懲役二秒〉)と、バランスよく選ばれた。どれも言うまでもなくライヴの場ならではの即興性が加えられている。内田は水を得た魚のごとくダイナックにギターをかき鳴らし、その自由奔放なギター表現は、ブルースを形式だけでとらえていては絶対に生まれてこないものだ。〈やっとられん〉のギター・ソロの後で甲本は「うわ〜」と感嘆の声を上げ、〈懲役二秒〉の後では「これは自慢できるでぇ〜」と観客に語りかける。“特等席”で内田のギターを堪能する甲本の生の反応が収められているのもこのライヴ盤の嬉しいところ。
〈49号線のブルース(スリーピーとハミー)〉が収録されたことも喜びたい。1974年に来日し、日本の音楽ファンにブルースを歌い演奏すること、ブルースと共に生きることを強く印象づけたスリーピー・ジョン・エスティスとハミー・ニクスンが描かれた曲だ。内田は彼らの1976年の再来日時に憂歌団としてツアーを共にしている。初来日のおよそ50年後に彼らを歌った曲が発表され、共演のおよそ50年後にライヴ録音が発売されたことに感慨を覚える長年のファンは少なくないだろう。語りかけるような甲本の歌は、スリーピーとハミー、そして憂歌団のことを後世に伝えることができる悦びに満ちている。
ライヴとスタジオ録音は即興性などの面で大きく異なるが、このライヴ・アルバムでは内田がエレアコを用いていることで、サウンド面での違いが楽しめる。本作のフィナーレを飾る〈ブギ連〉でのリバーブの効いたサウンドが強烈だ。
このライヴ盤を聴けば自慢したくなる気持ちもわかるだろう。今度はあなたが『ブギる心』を自慢する番だ。
ブギ連『ブギる心』
CD:ソニー/アリオラ BVCL-1520 ¥3,182+税
完全生産限定盤12インチアナログ盤:ソニー/アリオラ BVJL-141 ¥5,000+税
2026年6月3日発売
www.boogie-ren.net
収録曲
1. ブギ連ジャイブ#1
2. ブルースがなぜ
3. ナマズ気取り
4. やっとられん
5. 49号線のブルース(スリーピーとハミー)
6. 懲役二秒
7. ブギ連




















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