2024.2.21

【SPECIAL INTERVIEW】「ブルースは感情をそのまま表現する正直な音楽なんだ」ブルースの明日の扉を開くギタリスト、マサイアス・ラティン

[取材・文]山﨑智之

ブルースの明日の扉を開くギタリスト、マサイアス・ラティンが2024年2月、デビュー・アルバム『アップ・ネクスト』を発表する。

若さに任せたギター・プレイとツボを心得たソングライティングを兼ね備えた存在として注目され2023年、20歳にして《インターナショナル・ブルース・チャレンジ(IBC)》のバンド部門で優勝、最優秀ギタリストにも選出。3年“先輩”にあたるクリストーン“キングフィッシュ”イングラムが「一番気に入っている若手ギタリスト」と語り、何度もステージ共演を果たしてきたのがマサイアスだ。ブルースの伝統を未来へと受け継いでいく若きミュージシャンが語る。

──あなたの経歴を教えて下さい。
マサイアス・ラティン「2002年7月16日、テキサス州ヒューストン生まれだ。ミュージシャンの家庭ではなかったけど、みんな音楽が好きだった。俺にとって重要な出来事だったのは、小学校の課外コースでジャズを聴いたことだった。ウェス・モンゴメリー、ディジー・ガレスピー、ソニー・ロリンズなどを聴いて、すっかり音楽好きになったんだ。そうして10歳のとき祖母にB.B.キングを聞かされたのがブルースとの出会いだった。理想的な入門編だったよ。最近、俺も若い音楽ファンから『ブルースに興味がある。何を聴けばいい?』と訊かれることがあるけど、いつもB.B.を薦めているんだ。『ライヴ・アット・ザ・リーガル』(1965)の〈スウィート・リトル・エンジェル〉、それから『ミッドナイト・ビリーヴァー』(1978)でクルセイダーズとやった〈ネヴァー・メイク・ア・ムーヴ・トゥー・スーン〉には知っておくべきすべてがある。B.B.のライヴを見ることが出来なかったのが本当に残念だよ」

──どんなギタリストから影響を受けましたか?
マサイアス・ラティン「《クロスロード・ギター・フェスティバル2010》のDVDを見ながらB.B.、エリック・クラプトン、バディ・ガイ、ジミー・ヴォーン、ロバート・クレイのプレイを何時間も練習したよ。他にもジョニー・ギター・ワトスン、ウェス・モンゴメリー、ジョージ・ベンスン、ゲイリー・クラーク・ジュニア……直接会ったことはないけど、みんな偉大な教師だし、さまざまなことを学んだよ」

──ブルースのどんなところに惹かれたのですか?学校の友人などもブルースを聴いていましたか?
マサイアス・ラティン「ブルースは感情をそのまま表現する正直な音楽なんだ。ブルースを聴く人は、そんな部分に魅力を感じるんだと思う。人間に感情がある限り、ブルースがなくなることはないよ。ただ、周囲の友達は誰も聴いていなかった。それで12歳の頃からヒューストン近辺のクラブに出入りして、大人たちがやっているジャム・セッションに参加するようになった。《ビッグ・イージー》はヒューストンで一番古いクラブのひとつで、かつてTボーン・ウォーカーやクラレンス“ゲイトマウス”ブラウンなどが出演してきた。今でもトゥルーディ・リンのようなレジェンドが出演しているよ。俺が自分のバンドで初めてライヴをやったのも《ビッグ・イージー》で、アニカ・チェンバーズの前座だった。彼女は姐御みたいなものだし、“ビッグ・シスター”と呼んでいるよ」

──2023年にアルバム『アップ・ネクスト』でデビューを飾りましたが(日本仕様盤は2024年2月発売)、どんな音楽性だと説明しますか?
マサイアス・ラティン「ブルースの原点に根差しながら、誰でも楽しめる瞬間があるアルバムにしたかった。トラディショナルなブルースからモダンなブルース・ロックまでをプレイしながら、自分らしくあろうとしているんだ」

──エレクトリックのリード・ギターをふんだんにフィーチュアしながら〈ルーズ・サム・ウェイト〉〈アイ・トライド・ソー・ハード〉など、キャッチーなフックとメロディがありますね。
マサイアス・ラティン「うん、ずっとブルースを聴いて、ギターで弾いてきたけど、自分を表現するためであれば、ひとつの様式に固執する必要はないと考えている。それはライヴについても言えることだ。ブルースを軸にしながら、制約されずに自由に弾くようにした。これまでシングルやEPを出してきたけど、このアルバムはヴィズトーン・レーベル・グループと契約しての第1弾リリースで、よりプロフェッショナルな作品になっているよ」

──同じ世代のブルース・アーティスト達のあいだで連帯感やライバル意識はありますか?
マサイアス・ラティン「クリストーン“キングフィッシュ”イングラムやディラン・トリプレット、スティーヴン・ハルは才能に満ち溢れているミュージシャンだ。みんな20代から30代で、友人でもある。新しい時代に音楽を受け継いでいく中間だよ。キングフィッシュのギター・テクをやったこともあるんだ。俺もちょうどオフだったから『いいよ』って。今度彼が日本に行くと聞いて(フジ・ロック・フェスティバル’24)『ギター・テクをやろうか?』と言ったら『間に合ってる』だってさ(苦笑)。いずれ自分のツアーで日本に行くよ。『アップ・ネクスト』のジャケットでは日本製のSugiギターを持っているし、いつかプレイするのが夢なんだ」

──現在21歳ですが、今後のキャリアのヴィジョンはありますか? “ブルースの未来”と呼ばれることについてはどう考えますか?
マサイアス・ラティン「“ブルースの未来”なんて光栄だし嬉しいよ。重荷に感じたことは一度もないし、まだ止まるつもりはない。70歳・80歳になるまでブルースを続けるつもりだ」


MATHIAS LATTIN: Up Next
マサイアス・ラティン/アップ・ネクスト
CD(BSMF-2854)[2024年2月21日発売]

1. Who’s Been Loving On You
2. Lose Some Weight
3. Can’t Stop Feeling
4. You Know This Won’t Do Ft. Kyle Turner
5. Party
6. You Don’t Love Me No More
7. I Tried So Hard
8. 2nd Degree
9. After Party
10. Lose Some Weight (Live)

www.mathiaslattin.com/

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