2024.3.18

【SPECIAL INTERVIEW】 「ブルースはハートの音楽だし、人間にハートがある限り、ブルースがなくなることはないわ」 スー・フォーリー・インタヴュー

[取材・文]山﨑智之

スー・フォーリーがニュー・アルバム『ワン・ギター・ウーマン:ア・トリビュート・トゥ・ザ・フィーメイル・パイオニアズ・オブ・ギター』を発表する。20世紀において個性的なスタイルを創り上げてきた女性ギタリスト達に焦点を当てた本作ではメンフィス・ミニーやシスター・ロゼッタ・サープなどのブルース・アーティストのみならず、テハノ・ミュージックのリディア・メンドーサ、クラシックのイダ・プレスティらによる楽曲にも踏み込んでいく。
本誌No.177(4月24日発売)に掲載されるインタヴュー記事ではアルバムについて語ってもらったが、アルバム発売に合わせて一足先に未掲載パートをご紹介。さらに掘り下げるのに加え、カナダ出身のスーとテキサスのブルース・シーンの関わりについて訊いた。

──『ワン・ギター・ウーマン』で特にプレイするのが難しい曲はありましたか?
スー・フォーリー「どれも難しかったわ。メンフィス・ミニーの曲はディープで、オリジナルを生かしながらアレンジするのが難しくて、チャロの〈ラ・マラゲーニャ〉は何テイクか録ったけど、いつだってチャレンジだった。テクニックが求められるし、メキシコのフアパンゴの曲展開にも独特なものがあって、それに自分の命を吹き込まねばならないからね。イダ・プレスティの〈ロマンス・イン・Aマイナー〉のようなクラシック曲も自分のものにするのにひと苦労したし、〈メイベルズ・ギター〉でメイベル・カーターのカーター・スクラッチを弾くのもハードルが高かった。でもそれをひとつひとつクリアしていくのは満ち足りた気分だったわ」

──アルバムではどんなギターを弾きましたか?
スー・フォーリー「サルヴァトーレ・カスティーヨのハンドメイドのフラメンコ・ギターを弾いた。2022年にメキシコのパラチョで買ったのよ。ギター職人の町として知られているミチョアカン州の小さな町だけど、都会から何百キロも離れていて、まるで巡礼の旅に出るようだった。出来たてのギターを手にして、“自分のために作られた”という感じで嬉しかったわね」

──あなたがアルバム『ヤング・ガール・ブルース』でデビューした1992年といえばB.B.キングやジョン・リー・フッカーが現役でバディ・ガイが復活、スティーヴィ・レイ・ヴォーンが亡くなるなどブルースが注目を集めていた時期でした。当時のブルース・シーンはどのようなものでしたか?
スー・フォーリー「私がカナダからオースティンに引っ越してきたとき、ブルースのシーンはすごく活発だった。スティーヴィは亡くなってしまったけどお兄さんのジミーとファビュラス・サンダーバーズがいたし、ボビー“ブルー”ブランド、アルバート・コリンズ、クラレンス“ゲイトマウス”ブラウン、アール・キング……伝説的なブルース・ミュージシャンがいて、地元のクラブ・シーンもすごく活発だった。ZZトップのビリー・ギボンズは天才だと思うし、ルー・アン・バートンの『リード・マイ・リップス』(1989)は最高のアルバムね。私のアルバムをプロデューしてくれたこともあるデレク・オブライエンもいたし、素晴らしいギタリストであるデニー・フリーマン、それにジョージ“ビッグ・ビート”レインズも凄腕のドラマーだった。クラブ“アントンズ”を中心に賑わって、ブルースに関わる誰もが毎晩集まっていた。自分の居場所を見つけた心境だったわ。スティーヴィとは握手して『こんにちは』と挨拶した程度だったけど、もっといろいろ話したかったわね」

──ジミー・ヴォーンは心臓の手術をするなど体調が心配ですが、近況はご存じですか?
スー・フォーリー「こないだ会ったわ。元気そうだし、ギターも絶好調よ」

──オースティンで活動するようになってからあなた自身、そしてブルース・シーンはどのように変化しましたか?
スー・フォーリー「私自身は正直それほど変わっていないと思う。ギターの技術は身についたけど、基本やっていることは同じよ。オースティンのブルース事情も同様で、ファンクやR&B、シンガー・ソングライターなどが盛んだけど、シーンの根っこは変わらない。ブルースはハートの音楽だし、人間にハートがある限り、ブルースがなくなることはないわ」

──ブルースを未来に向けて生かし続けることは自分の責務だと考えていますか?
スー・フォーリー「ある程度はね。現代のブルース・プレイヤーは誰でも、多かれ少なかれそう考えているんじゃないかな。100年以上の伝統を受け継ぎ、先達に敬意を払いながら、次の時代に繋げていく。『ワン・ギター・ウーマン』は自分が楽しむために作ったアルバムだけど、偉大な女性ギタリスト達の音楽を未来に受け継いでいくことも念頭に置いている。自分だけではこの音楽は生み出せなかったんだからね。私はカナダ出身だし、生まれ育った文化と環境にブルースはないから、自分がブルースの“再解釈者”だと捉えているわ」

──テキサスやミシシッピ、シカゴ出身ではないからこそブルースを客観視出来ることもあるのでしょうか?
スー・フォーリー「そうかも知れない。テキサスには素晴らしいミュージシャンが大勢いるし、彼らのやってきたことを受け継いで次の世代に繋げていくことが出来たら光栄だわ。元々オースティンに来たのは、独自のサウンドに魅力を感じて、それを吸収したかったからだった。もう30年ここに住んできたし、ここの人々と文化から受け入れてもらっているから、客観視なんて出来ないけどね。もうテキサスの一部よ」


SUE FOLEY: One Guitar Woman: A Tribute To The Female Pioneers Of Guitar
スー・フォーリー/ワン・ギター・ウーマン:ア・トリビュート・トゥ・ザ・フィーメイル・パイオニアズ・オブ・ギター
CD(BSMF-2858)[2024年3月22日発売]
1. Oh Babe, It Ain't No Lie
2. In My Girlish Days
3. Lonesome Homesick Blues
4. Mal Hombre
5. Motherless Child Blues
6. Romance In A Minor
7. My Journey To The Sky
8. Nothing In Rambling
9. Maybelle's Guitar
10. Freight Train
11. Last Kind Words Blues
12. La Malagueña

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