ブルース&ソウル・レコーズ

【特集:伝えておきたいブルースのこと】㊾ブルース100歳を祝う

 2003年、アメリカ議会はその年を「イヤー・オブ・ザ・ブルース(ブルースの年)」と宣言した。W・C・ハンディがミシシッピ州タトワイラーの駅でブルースと思われる演奏を初めて耳にしたのが1903年。ちょうど100年の節目に、ブルースを祝うイヴェントがいくつも行なわれた。

 マーティン・スコセッシ製作総指揮の下、7本のドキュメンタリー・フィルムが作られた。スコセッシ、ヴィム・ヴェンダース、クリント・イーストウッド他、7人の監督がそれぞれにテーマを設けて撮影に挑み、それらは「ザ・ブルース・ムーヴィ・プロジェクト」として、同年10月にアメリカの公共放送ネットワークPBSにて放映された。ブルースとアフリカとの関係に迫った『フィール・ライク・ゴーイング・ホーム』、メンフィスを舞台に同地の歴史とアメリカ南部の生のブルース・シーンを見せた『ロード・トゥ・メンフィス』等、どれもブルースを理解する上で有意義な作品であった。

 これに先駆けて、2月7日には「サルート・トゥ・ザ・ブルース」と題されたコンサートがニューヨークで開かれた。B・B・キング、バディ・ガイ、クラレンス・ゲイトマウス・ブラウンら、出るべき人が出たのはもちろん、メイシー・グレイ、モス・デフなどR&B/ヒップホップで活躍する若手もステージに立ち、ブルースの伝統を繋ぐ意図もみえた。これは映像に収められ『ライトニング・イン・ア・ボトル』の題で発表された。

 アメリカという国が生み出したブルースをその政府が祝うということに、皮肉を感じ、斜めに見る人もいるだろうが、ブルースという音楽が文化として認められたことは祝うべきだろう。

 今、アメリカ南部ではブルースが観光資源になっている。ブルースゆかりの地にマーカー(記念碑)を立て、観光地としてアピールする「ミシシッピ・ブルース・トレイル」は2006年にスタートし、2013年の時点で160箇所にマーカーが立てられている。スマートフォン用のアプリもあり「blues trail」で検索し入手してみてほしい(無料)。各マーカーの解説が読め、関連アーティストの紹介や動画も見られる。

 また、B・B・キング・ミュージアムを始め、ブルース関連の博物館がいくつも立てられ、ブルースと黒人の歴史についての理解を深める役目を果たしている。

 ブルースが観光資源化する一方で、今なお生きたブルースもある。それを忘れずに、ブルースの来た道を辿ってみたい。


ザ・ブルース・ムーヴィ・プロジェクト(ハピネット HMBR-9001) [2011]
[上]2005年に発売されたDVDセットのリパッケージ版

ライトニング・イン・ア・ボトル(日活 DVF-106)[2005]
[下]03年の記念ライヴを収録


ミシシッピ・ブルース・トレイル ブルース街道を巡る旅
桑田英彦 著 Pヴァインブックス刊 [2012] 公式ガイドブック


ブルース・トレイルの地図を掲載したパンフレット 無料で配布されている

特集:伝えておきたいブルースのこと50
㊼催眠グルーヴの渦 時代と共鳴したヒル・カントリー・ブルース
㊽潜り込むブルース ヒップホップとつながるもの