2022.6.28

【BSR Playlist Archives】第9回 湯川れい子

ブルース&ソウル・レコーズがゲストを招き、ブルース&ソウルの魅力を紹介するプレイリスト企画『BSR Playlist Archives』。第9回のゲストは音楽評論家、作詞家の湯川れい子さん。

エルヴィス・プレスリーの活躍を最前線で追い、紹介してきた湯川さん。執筆された多数のライナー ノーツや書籍、ラジオDJでの活動などは、本誌読者ならばよくご存知だろう。湯川さんの結婚時 (1973年)には、エルヴィス本人から結婚証明書に証人としてサインをもらうなど、公私ともにエルヴィスへの愛に溢れたエピソードも数多く残っている。7月1日(金)より公開される映画『エルヴィス』では字幕監修も担当されており、こちらも見逃すことができない。

今回は湯川さんに作成いただいたプレイリストとともに、選曲時の直筆原稿用紙も特別に許可をいただき公開させていただく。エルヴィスの軌跡を辿るプレイリスト、映画『エルヴィス』と併せて楽しんでいただけたら幸いだ。

プレイリストはこちらから!

Vol.9「Elvis 〜歌で綴る人生〜

(湯川れい子さんによるコメント)

ビートルズが登場した1964年に、東京オリンピックが行われるまでは、TVや外国との通信網も無く、人気絶頂のエルヴィスが入隊してドイツに向かう映像を、私は映画館の白黒のニュースで見た。

 一方、エルヴィスが生まれ育ったミシシッピー州のテュペロという田舎は、夜の8時と言えば月明かりと虫の声。ラジオは2局だけというところ。

 そんな貧しい南部の黒人居住区で遊びながら、その血と肉と魂の中に、黒人のゴスペルとブルース、白人の讃美歌とC&Wを蓄えたエルヴィスが、やがてメンフイスと言う街に出て、それらをロックンロールとして無邪気に爆発させ、TVに登場して白人の茶の間に暴れ込んだのが1956年。

 まさにそれは人種問題にも火をつけたとんでもない革命だったけれど、残念ながら日本には、ヒット曲としてしか伝わることは無かった。

 結果、エルヴィスがどれほど壮絶に、天から与えられた自分の歌の力を信じ、歌うことで生き、歌うことで死んで行ったのか。

 やっと今回トム・ハンクスが、エルヴィスのマネージャー役に憑依したような演技を見せてくれる映画『エルヴィス』で、日本にも初めて皮膚感覚として伝わってくれるのではないか…、と願っている。

音楽評論、作詞 湯川れい子

【プロフィール】
東京都目黒で生まれ、山形県米沢で育つ。

昭和35年、ジャズ専門誌『スウィング・ジャーナル』への投稿が認められ、ジャズ評論家としてデ ビュー。その後、17年間に渡って続いた『全米TOP40』(旧ラジオ関東・現ラジオ日本)を始めとするラジオのDJ、また、早くからエルヴィス・プレスリーやビートルズを日本に広めるなど、独 自の視点によるポップスの評論・解説を手がけ、世に国内外の音楽シーンを紹介し続け、今に至る。また、作詞家としては、代表的なヒット曲に『涙の太陽』、『ランナウェイ』、『ハリケーン』、『センチメンタル・ジャーニー』、『ロング・バージョン』、『六本木心中』、『あゝ無情』、『恋 におちて』などがあり、「FNS歌謡祭音楽大賞最優秀作詞賞」、「JASRAC賞」、「オリコント ップディスク賞作詞賞」など、各レコード会社のプラチナ・ディスク、ゴールド・ディスクを数多く 受賞。NHKで放映された手塚治虫アニメ主題曲『火の鳥』、WFP(国連食糧計画)支援のゴスペル曲『きずな』がスペシャルオリンピックス日本のサポート・ソングになり、話題を呼ぶ。

またディズニー映画「美女と野獣」「アラジン」「ポカホンタス」「ターザン」などの日本語詞も手 がけている。

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