1945年に第二次世界大戦が終り、不足していた78回転盤レコードの原料であるシェラックの供給が再び始まった。それもあって1940年代後半には各地で独立レーベル(レコード会社)がぞくぞくと誕生する。そこから新しい時代のブルース/リズム&ブルースが生まれていった。
終戦の年にギルト・エッジという小さなレーベルから発表され、R&Bチャート1位の大ヒットとなったセシル・ギャントの〈アイ・ワンダー〉に触発されて、早くも同年にロサンゼルスでバイハリ兄弟がモダン・レコードを設立した。1950年に始めたRPMレーベルでは、B・B・キングが本格的にレコーディング・スターの道を歩み出している。他にミーティア、フレアー、ケント、クラウンといったレーベルを抱えていた。
1946年にアート・ループが起こしたジューク・ボックス・レコードもロサンゼルスのレーベルだ。後にスペシャルティと改名され、ロイ・ミルトン、ジョー・リギンズといった西海岸の人気バンドを手掛けている。54年にはギター・スリムが〈ザ・シングス・ザット・アイ・ユースト・ドゥ〉の特大ヒットを飛ばした。
ロスにはルー・チャッドが1947年に創設したインペリアル・レコードもあった。バンド・リーダー/プロデューサーのデイヴ・バーソロミューの力によって、ファッツ・ドミノを筆頭にニューオーリンズR&Bを届けている。
ニューヨークでは1947年にアーメット・アーティガンが、ハーブ・エイブラムスンと共にアトランティック・レコードをスタート。49年にスティックス・マギーの〈ドリンキン・ワイン・スポ・ディ・オ・ディ〉のヒットで軌道に乗り、R&Bを代表するレーベルとなった。
同じく47年にはシカゴでレナードとフィルのチェス兄弟がアリストクラット・レコードを始める。後のチェス・レコードだ。マディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフ、リトル・ウォルター、サニー・ボーイ・ウィリアムスン(ライス・ミラー)といったブルース巨人たち、チャック・ベリー、ボ・ディドリーのロックンロール巨頭、さらにエタ・ジェイムズらのR&B名シンガーを抱え、ブラック・ミュージック名門レーベルとしてその名を歴史に刻む。
1943年にカントリー・ミュージックのレーベルとしてスタートしたシンシナティのキング・レコードは、1950年にR&Bレーベルのフェデラルを開始している。創設者はシド・ネイザン。
この他にも、サヴォイ(42年)ピーコック(49年)、サン(52年)、ヴィー・ジェイ(53年)、エクセロ(同年)など、R&Bの重要レーベルがこの時期に誕生している。
これらの中には独自のスタジオを所有しているレーベルもあり、それぞれに個性的な音が生まれた。中でもチェスは、エコー、ディレイ、コンプレッサーといった録音技術を用いることで、50年代のブルースを象徴するようなサウンドを生み出した。それは今日でも模倣されるほどの魅力を放っている。
キャデラック・レコード
(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント OPL-60331)[DVD]
2008年/アメリカ/監督 ダーネル・マーティン
チェス・レコードを舞台にした作品で、50年代当時のレコード業界の内幕も見える。ビヨンセはエタ・ジェイムズ役を務めただけでなく、製作総指揮にも名を連ねた