台湾出身のソウルシンガー Yufu が、アルバム 『Heal Me Good』 をリリースした。本作は、70年代中期のソウル・サウンドを感じさせる、温かみのあるグルーヴと洗練されたメロディが印象的だ。クラシックなソウルのエッセンスを受け継ぎながらも、現代的な感覚を織り交ぜたこのアルバムには、Yufuが大切にしてきた音楽への愛と探求心が詰まっている。制作背景について、じっくり話を聞いた。
文/Jimmie Soul
Jimmie (以下:J) : アルバム収録曲全て好きなんですけど、"When?"がティミー・トーマスの影響を感じることができて特に気に入っています。
Yufu (以下:Y) : ティミー・トーマスの曲は本当に大好きなんですよ。でも面白いことに、その曲を作ったときは彼のことを特に意識していたわけじゃなかったんです。でも後になって、多くの人から「これってティミー・トーマスに影響を受けてるよね?」って言われて、「ああ、確かにそうかも」って思いました。ずっと心の中にその影響があったんでしょうね。
その曲では、同じリズムボックスを使いたかったんですけど、予算が足りなかったんです。だから、68年から69年あたりのドラムマシンやリズムボックスをずっと探していたんですが、見つからなかったり、あっても高すぎて手が出なかったんです。
それで、試しに手元にあった70年代初期のヤマハのオルガンを使ってみることにしました。そのオルガンにはリズムボックス機能がついていて、試してみたらその音がすごく気に入ったんです。「これを使おう!」って思いました。だから、最終的にはそれを使ったんです。本来ならドラムマシンでやるようなパートをね。
J: バックを務めているのは台湾のミュージシャンですか?
Y: そうですね。特にベーシストは、いわば僕のソウルブラザーみたいな存在で、名前はHooです。彼と僕は、おそらく桃園在住でソウル・ミュージックを理解している数少ない人間なんです。彼は70年代後半のサウンドが好きで、僕は70年代前半のサウンドが好きなんです。
J: ところで参加メンバーにThe Brothers Nylonが参加していますね!
Y: 彼らの大ファンなんです。思い立ってメッセージを送ったんですよ。「他のミュージシャンのためにオーケストレーションやホーンのアレンジをしたりしますか?」って。思いつきで聞いただけで、彼らが興味があるなんて知らなかったからね。
後に、みんなソウル・ミュージックが大好きだったこともあり、制作に協力してくれることになりました。それは本当に素晴らしい瞬間でした。
制作は完全にオンラインで進めました。僕がデモを共有し、彼らが録音したものを送り返してくれるというスタイルで作業を進めていきました。
それこそが国際的なソウル・シーンの素晴らしさですよね。彼らは本当にすごいし、天才ですよ。とにかく、彼らと一緒に仕事ができたのはまさに夢が叶った瞬間でした。
J: もう少しレコーディングのことを聞かせてください。今回はいわゆるアナログレコーディングなんですか?
Y: ハイブリッドな方法を取りました。最初は、The Brothers Nylonのようにすべてをテープで録音したかったんです。でも、残念ながらテープマシンが故障してしまって、台湾では修理できる人を見つけるのが本当に難しく、しかも修理費がすごく高かったんです。僕たちにはそんなにお金がなかったんですよね。
それで、ハイブリッドな方法を取ることにしました。録音自体はデジタルで行いましたが、録音するときにヴィンテージのコンソールを通したんです。そうすることで、あの独特の音の「色合い」を得られるんですよ。
J: 音質に関して理想としているサウンド・レーベルはありますか?
Y: 一番好きなのは1968年から1974年の音なんです。このアルバムでは特に1974年のサウンドに挑戦したかったんですよ。ちょっとマニアックになってきましたね(笑)。ギタリストとして考えると、1974年はすごく面白い年なんです。というのも、この頃からいろいろなエフェクトが使われ始めたんですよ。たとえばワウワウペダルとか。あの音を聴くと本当にワクワクしますね。
1972年から1974年にかけて音楽のスタイルが大きく変化したので、そのあたりをぜひ強調したかったんです。特にあのグルーヴィでファンキーなギターの感じがたまりません。だから僕にとって、1974年のサウンドにはすごく意味があるんです。
J: アルバムの全ての曲を作曲し、プロデュースも手掛けてますね。すごい才能ですね!
Y: ソウル・シーンにいる人なら、最終的にはみんなそういうことをやるようになると思うんです。例えば、The Brothers Nylonも間違いなく自分たちでミックスやプロデュースをしていますよね。特に台湾では、ソウル・ミュージックを演奏していると本当に孤独に感じるんです。レコードを回している人はいるけど、実際にソウルを作っている人はほとんどいないんです。だから、自分自身でプロデューサーにならざるを得ませんでした。今回のアルバムに関しては、すべて自分一人でやる必要があったんです。いつかはケリー・フィネガンみたいなミュージシャンと一緒に仕事をしてみたいと思っています。
英語全文はこちらで公開中 medium.com/@junokadaaa/taiwans-rising-soul-star-a-deep-dive-into-yufu-s-debut-album-heal-me-good-and-musical-journey-ec80d2b22c9e
『Heal Me Good』は2021年のセルフリリースEP『To My Penpal』と2023年リリースのスタジオ・ライヴ・セッション『Yufu on CINEMAPHONIC』に続いてリリースされる待望のデビュー・アルバム。デジタル化、AIの影響が増す現代社会で、Yufuがソウル音楽黄金期の官能的なサウンドと雰囲気を誘起する温かみのあるサウンドを再現することに力を注いだこの作品は、「クラシックソウルの楽しい時間」を前面に出しつつ、誰もが恋愛中に遭遇する癒やしや夢中になる感情を「薬」というテーマに込め、大切な誰かに対する深い感情を呼び起こす心の動きを表現している。

Heal Me Good
Produced and mixed by Yufu, mastered by Doug Krebs
Yufu instagram @yufu_groovin
Yufu Bandcamp yufu.bandcamp.com/album/heal-me-good