2026.11.7

【LIVE REPORT】なにわブルースフェスティバル2026 Day 2 なにわの夜に、お互いを称えて。

9月20日(日)なんばHatch

文:妹尾みえ
写真:FUJIYAMA HIROKO

◆ロビーライヴ2026

ロビーライヴ2026

開演前のロビーライヴの1日目は、ゴトウゆうぞうが溌剌としたパフォーマンスを見せた。2日目、3日目にはKOTEZに加え、河合わかばもトロンボーンを手に登場。この春、一時休養していた河合の元気な姿がうれしい。有山じゅんじ、清水興を軸としたミュージシャン同士の信頼もまた、なにわブルースフェスならではの雰囲気を醸成している。

◆ぬかるみ天国

アサキチ(vo/ag)、キム・ガンホ(eg)、 ホーリー(key)、 谷口潤(b)、仲井信太郎(dr)、Misa、Hiroko、浜礼子(cho)

ぬかるみ天国

“なにわのダン・ペン”と呼ばれるアサキチが〈南部女とフライドチキン〉を歌い出すと、おおらかな風と共にスパイスが香るよう。キム・ガンホのスライド・ギターも胸騒ぎを高める。難病と闘う幼なじみに捧げた〈家に続く道のように(Like A Road Leading Home)〉が心に沁みた。オリジナルはドン・ニックスとダン・ペンによる共作で、『Lovejoy』でアルバート・キングがギターを持たずに歌った1曲でもある。70年代の日本のフォークソングをアメリカン・ルーツ・ミュージックのテイストでアレンジした5作目にして初のカヴァーCD『Folky』のリリースが待ち遠しい。

◆田内洵也

田内洵也

桑田佳祐がプロデュースした〈深川のアッコちゃん〉で話題になった旅するシンガーソングライター。高校のときにロバート・ジョンスンに出会って以来ブルースに魅せられてきたエピソードを交えつつ、この日はフォーキーなオリジナル中心。ラストに「僕なりのブルース・ナンバーを」とラグ風味の〈東京moon〉を伸びやかな声で聞かせた。

◆三沢カヅチカ a.k.a. 藤井聡 with friends

三沢カヅチカ(藤井聡)(vo/g)、早崎詩生(key)、山口敬太(b)、ドニー(dr)
[Special Guest] 岩見和彦(g)

三沢カヅチカ a.k.a. 藤井聡 with friends

京都大学大学院教授で経済学者・評論家の藤井聡が音楽活動をするときの名前が三沢カヅチカ。内閣官房参与を務めていた経験もあり、インボイス制度を題材にした〈聞け!俺のインボイス ~ラスボスのテーマ〉はじめ、ストレートな社会風刺や政治的メッセージを込めた骨太なロックンロールで押しまくった。ゲストにナニワエキスプレスの岩見和彦。吾妻光良 & The Swinging Boppersなどで活躍する早崎詩生も熱いプレイで盛り上げた。

◆静沢真紀ブルース・バンド featuring 近藤房之助

近藤房之助(vo/g)、 静沢真紀(g/vo)、花田えみ(org)、清水興(b)、マーティ・ブレイシー(dr)、原田喧太(g)

毎年さまざまなセットで出演してきた近藤房之助が、今年はブルース・バンドのフロントで、1曲目からオーティス・ラッシュの〈I Can’t Quit You Baby〉を聞かせた。日本でラッシュといえば近藤房之助。やはりまだまだラッシュのナンバーを歌い、弾いてほしいと思わずにいられない。ずしっと重いネッド・ローゼンバーグ作の〈I’ll Keep Tryin’〉も40年近く歌ってきた1曲だ。昨日に続き出演した花田えみのオルガンがファンキーな味わいを加速する。ヴォーカルをバトンタッチされた真っ赤な衣装の静沢真紀は〈Te-Ni-Nee-Ni-Nu〉を。ドライヴするギターが好調を感じさせるとここで原田喧太を呼び込んでのご存知〈Same Old Blues〉。ギターは主に若い2人が担当し、近藤は心地よい緊張感から生まれるエモーションに身を委ねながらシャウトした。若い世代に投げかける視線の温かさも印象的だったが、フロントマンとしての近藤房之助はやっぱり格段に魅力的だった。

◆ナオユキ

ナオユキ

2日目、3日目はピンでの出演。ああ、この人間模様がビートを味方に世に飛び出したのがDABEだったんだなと昨日のステージを思い出しながら、笑わせてもらった。

◆奇妙礼太郎

奇妙礼太郎

彼がステージに出てくると、ふんわり空気が変わる。挨拶もそこそこに歌い出したのは〈みんなの願いはただひとつ〉。「お金はやっぱりあるほうがいい!」と自然に口ずさむ客席を見回し「この曲をこんなに知ってるコンサートなんかない」と笑いを誘う。「これもブルースなんとちゃうか」と声を張らぬまま〈赤いスイートピー〉を歌い、また客席は自然に巻き込まれてゆく。さらには〈愛の賛歌〉を歌いあげるでもなく歌い、最後は〈俺の家には朝がない〉へ。この構成が不自然に思えないから奇妙礼太郎とは不思議なアーティストだ。最後の曲では有山じゅんじも下手からふらっと現れたのだが「ありやまじゅんじ~~」とシャウトする奇妙礼太郎のその声に精一杯のリスペクトがこめられていた。

◆内田勘太郎

あっさり去って行った奇妙礼太郎の後を引き受け、〈あさってベイビイ〉をゆっくり唄い始めたのは内田勘太郎。ギターを奏でつつ日本語での〈イマジン〉から一転ブギのリズムに。

「15歳ぐらいのときにジョン・リー・フッカーとか好きになって。でもどうしてもあの感じが表現できないのでチューニングを変えてみたらどうかなと、ふと思い付いたんだ」とその場でぐんぐんチューニングを変えると、一気に邪気が運ばれてきた。多感な時期にこの感覚を覚えたならもうブルースしか見えなくなってしまう。気高さと悪魔性との間をギターひとつで自在に行き来する内田勘太郎の奥行きを改めて見せつけられた。

◆内田勘太郎+木村充揮+奇妙礼太郎

内田勘太郎+木村充揮+奇妙礼太郎

ここでサプライズが起きた。「木村くんていう人を紹介させてもらいます」と呼び込まれたのはもちろん木村充揮。昨年の久々の共演もあり期待していた人もいただろう。割れんばかりの拍手の中、久しぶりに歌ってみない?と勘太郎のギターから聞こえてきたメロディは〈君といつまでも〉。少しだけ間があって、寄り添うでも溶け合うでもなく、2人がそこにいる。「うちだかんたろぉ~~」「きむらあつき!」とお互いの名前を呼ぶだけでいい。「俺、木村君の言ってること全部わかるんだ」と照れ笑いする勘太郎の言葉にほっとしたりもする。

ここで、もう一度奇妙礼太郎が呼び込まれた。実は今年7月に開催された彼の初の日本武道館公演で木村・内田・有山じゅんじによる共演は実現しており、この日も下地はあったのだろう。

〈いとしのレイラ〉〈ミスティ〉と勘太郎が思い付くままに奏でると、知らんぷりしているように見えた木村も絶妙のタイミングで反応する。「Dm!」を連呼した後、木村が〈ダンシング・オールナイト〉を熱くシャウト。そしてラストは〈嫌んなった〉。必要以上に持ち上げることもなく、かといって礼を欠くこともなく絶妙なバランスで見守る奇妙礼太郎の存在が光る。素面で臨んだ内田勘太郎もようやくいいお酒が呑めたはずである。

◆三宅伸治 & the spoonful

三宅伸治(vo/g)、KOTEZ(vo/harm)、高橋“Jr”知治(b)、茜(dr)

三宅伸治 & the spoonful

〈たたえる歌〉のイントロが聞こえると客席はすでに総立ちムードだ。毎年どんなに短い時間でも完全燃焼して盛り上げてくれる彼ら。時間の関係でどうしても代表曲オンパレードになるけれど、今年は三宅伸治&The Red Rocks(the spoonfulのメンバーも参加)の最新作『DEEP BROWN EYES』から〈すべてはうまくいったのだ〉を聴かせてくれた。今まで以上に三宅伸治の歌と人生に対する真っ直ぐな姿勢が感じられるアルバム、その中でも特にストレートに気持ちが伝わってくる一曲だ。〈デイ・ドリーム・ビリーバー〉から三宅が客席を練り歩く〈ロール・オーバー・ベートーベン〉、そしてもちろん最後は〈Jump〉。観るたびに新鮮で、観るたびにバンドとして逞しくなるthe spoonfulである。

◆泉谷しげる

泉谷しげる

すっかりレギュラーになった泉谷しげるは、《全力ライブ90分!》を中心に今もツアーで現場を走り続けている。この日もフルスロットル。〈巨人はゆりかごで眠る〉〈Y染色体のうた〉〈春夏秋冬〉そして〈野生のバラッド〉といった決してほころびることのないビートを持った言葉が時代を超え響きまくる。この日も最後は「スマホ出せ、撮れ、撮れ」の合図で大撮影会に。観客と向き合う距離の近さが半端ない。サウス・トゥ・サウスとの交流をはじめ70年代から日本のブルースの傍らで並走し、時に日本の風景の中からブルースを掬いだして歌ってきたロックンローラーのエネルギーを全身に浴びた。

◆BIG HORNS BEE+KenKen+松浦千昇+山岸潤史+金子マリ

金子隆博(key)、佐々木史郎(tp)、築山昌弘(tp)、河合わかば(tb)、石川周之介(sax)、織田浩司(sax)、和泉聡志(g)、金子マリ(vo)、山岸潤史(g)、KenKen(b)、 松浦千昇(dr)

〈ファンク浪漫〉でBIG HORNS BEEのゴージャスかつ骨太なショーが始まる。続いて5管のホーン・セクションがドライヴする〈Let’s Have A Natural Ball〉のイントロで登場したのはもちろん今年グラミー賞にノミネートされたJune Yamagishi。「あ!花をくわえてる!」と個人的に思わずガッツポーズ。アルバート・キングが『LIVE WIRE/BLUES POWER』のジャケットで、フラワー・ムーヴメントを演出して可憐な花(山岸はそれをタンポポと呼ぶ)をくわえているのを思い出した人なら抱腹絶倒の瞬間だ。去年はアルバートになりきってフライングVにパイプをくわえてスーツ姿で登場し、来年は “タンポポ!”と宣言していた山岸。この思いきりステージを楽しむ姿勢がたまらない。

続いて金子マリが登場し〈最後の本音〉から、昨年50年の時を経て音源化されたスモーキー・メディスン時代の〈Joy To The World〉へ。山岸はギターで、金子マリは歌で半世紀の間、こうして信じた歌と共にずっとステージに立ち続けてきたのだ。

ラストはいつも胸の熱くなるいのちの賛歌〈ありがとう〉。これもまたいつか誰かに聴かれ続け、そして歌い継がれていく1曲だろう。ありがとう、今日はいい日だね。その言葉をそっくりそのまま返したくなる2日目の夜が終わっていった。

▶Day 3も近日公開!

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