文:妹尾みえ
写真:FUJIYAMA HIROKO
◆ゴトウゆうぞう+静沢真紀

11年目にして記念すべき10回目は初めての3日間SOLD OUT !
なにわでブルースを楽しむ3日間が、すっかりそれぞれの時間に根づいた証だろう。
暗転とともに下手からハーモニカを吹きながら登場したのはゴトウゆうぞう。静沢真紀がギターを弾きながら、ゆっくり後に続く。ジャパン・ブルース&ソウル・カーニバルでおなじみだった“主催者からのお知らせブルース”だ。1986年に始まったこのコンサートで20年あまり司会を務めたゴトウゆうぞうによる、日本のブルース史に残る1曲と呼んでしまおう。場所を変えて蘇った名調子は、日本のブルース史の中に「なにわブルースフェスティバル」が存在することを改めて教えてくれる。ハーモニカもヌケのいい音で鳴っていた。元をたどればゴトウゆうぞうは、8.8 ROCK DAYで優秀賞を獲得したJAMAICAのヴォーカリスト。ブルース、ソウルはもとより河内音頭などを通じ関西音楽シーンとのつながりは深い。京都・拾得で毎月10日に行ってきた「ゴトウゆうぞうSHOW」は2026年10月で245回を数えるそうだ。今度はぜひ自身のユニットでもたっぷり聴かせていただきたい。
◆BLUESAHOLIC
ダヴィーナ・ロビンソン(vo)、篠原裕(g)、花田えみ(org)、清水興(b)、高木太郎(dr)

2020年結成。フィラデルフィア出身の多才なシンガー、ダヴィーナ・ロビンソンが、ポジティヴ・パワー全開でツワモノ揃いのバンドを率いていく。短い時間ながらダヴィーナのエナジーに応えるバンドの瞬発力も半端ない。UK Songwriting Contest Blues部門で入賞したキャリアも持つ彼女らしくオリジナル中心。流暢な日本語を交えての〈OSAKA BOYS〉の掛け合いで存分に客席を温め、オープニングアクトの役割を見事に果たした。
◆角打ちシスターズ
和田八美(vo/p)、静沢真紀(g/vo)

新作『琥珀』をリリースしたばかりの実力派デュオが、ヒョウ柄の衣装で揃え2度目の出演。静沢のギターの師匠であった塩次伸二が「この曲ができればブルース初段」と太鼓判を押したという〈Hide Away〉で幕開け。芯のあるギターの音がダイナミックなピアノとからみあい、角打ちシスターズならではのグルーヴを醸し出す。アルバムでもハイライトとなる〈テネシー・ワルツ~去りにし夢~〉では、和田の情感あふれる歌声が満員の客席にため息にも似た余韻を残した。
◆DURAN
DURAN(vo/g)、Shiho(dr)、MASAE(b)、鬼塚康輔(sax)

ギタリストとしてのDURANの活躍を知る人は多いだろうが、DURANは3ピース・バンドの名前でもある。アコースティック・ギターから艶のあるスライドがはじけた瞬間、会場の色が変わる。2024年発表のブルース・アルバム『30 Scratchy Backroad Blues』の1曲目〈Look Behind You〉だ。ロバート・ジョンスンの〈They're Red Hot〉は、同作で山岸潤史をゲストに迎えていたナンバー。こうしたホウカム調のカヴァーから、曲そのものにパワーを感じるオリジナルまで、時間をめいっぱい使ってワイルドかつ端麗な時間を堪能させてくれた。エネルギーの渦にぐいぐい引き込んでいくスタイルは米南部のガレージ・ブルースを思わせるが、ギターだけが主張するのではなく豊かなアンサンブルこそが魅力。みずみずしい感覚のファンになった人も多かったようだ。
◆BLUES GUITAR SUMMIT ブリティッシュ・ロック編
人見元基(vo)、山本恭司(g)、ROLLY(g)、清水興(b)、平陸(dr)

「Are You Ready!Yeah」。元VOW WOWのシンガー人見元基が〈Move Over〉で舞うように勢いよく中央へ飛び出す。一気に客席もヒートアップする。リズム隊がベテラン清水興と1996年生まれの平陸というのも、なつかしい×あたらしいを謳うなにわブルースフェスならではだ。2曲目のオーティス・ラッシュ〈I Can't Quit You Baby〉は、おそらくレッド・ツェッペリン版だろう。「(白人の)邪悪なブルースでした」と笑う人見。邪悪だと指摘したのは大学のサークルで先輩だった吾妻光良である。人見自身も言及していたがクリームなどを通じてブルースに自然に触れてきた世代。同期には小出斉もおり、邪悪だろうとなんだろうと、さぞ濃厚なブルースに囲まれていたのだろう。
さらに“邪悪なブルース”はハード・ロック・アレンジの〈Rock Me Baby〉へと続く。間合いもバツグンな2人のギタリストに火を付ける人見のハイトーンシャウト。ROLLYはイントロで踏切の音と〈梅田からナンバまで〉をアレンジしつつ〈Goin’ Down〉へ突入。客席も「ダウンダウンダウン~」と大合唱である。ラストはツェッペリンの〈Rock And Roll〉で場内総立ち。余裕もあれば華もあるロック・スターによる完全燃焼のブルース・リスペクト大会だった。

◆BLUES GUITAR SUMMIT アメリカン・ロック編
西慎嗣(g)、Ichiro(g)、原田喧太(g)、清水興(b)、マーティ・ブレイシー(dr)

〈Cissy Strut〉でがらりと変わりアメリカ南部の風が吹く。やわらかなトーンに年輪を感じさせる西慎嗣(ex.スペクトラム)が歌うのは〈I Can't Stand The Rain〉。ご存知アン・ピーブルズの代表曲だが、ロン・ウッドやローウェル・ジョージで知ったという。Ichiroによるオールマン・ブラザーズ・バンドの〈Soulshine〉からバトンは原田喧太へ。学校より桑名正博から多くを学んだという原田が選んだのは、ファニー・カンパニーの〈退屈はあぶくになって〉だった。ここでまたなにわのロックとブルースの歴史がつながった。
70年代初頭はジャンル問わず、集まれば夜通しブルース・セッションになったという話を耳にしたことがある。これまでもロック・レジェンドが出演してきたが、日本のブルースとロックとの熱い関係を反映した、なにわBFらしい企画だったと感じた。
◆永井“ホトケ”隆+山岸潤史

ロック熱が醒めやらぬ中、「ブルースやってます」と開口一番ホトケが客席を見やる。「だらっとお茶飲んでる感じでネ」と山岸は笑うが、2人がギターを抱え腰をおろすだけで、自分たちのブルースをやるんだ――そんなそこはかとない自信が漂う。2024年に2人で録音した『…still in love with the Blues』から〈Ramblin' On My Mind〉。そして初めてデュエットで歌ったというクッキー&ザ・カップケイクスの〈Got You On My Mind〉、そして2人だけでグルーヴするバンドの定番〈I Don't Want No Woman〉。山岸のギター・トーンはもちろんホトケのギターが刻むリズムもこの上なく心地よい。バラード〈I'm Still In Love With You〉から間髪入れずに後半日本語になる〈Rollin' And Tumblin'〉へ。誰も何も言わなくても自然に手拍子が起きる。いぶし銀なんて表現は使いたくない。光の当たり具合でいろんな輝きを見せてくれる2人のブルースを存分に味わった。
◆DABE
ナオユキ(vo)、原田喧太(g)、小笠原義弘(b)、KenKen(dr)

毎年、軽妙な語り口で会場をわかせてきたナオユキがバンドで登場。ひと言で言えば想像以上だった。これまでネタにされてきた、あの日あの店で見かけたおっちゃんや、何をやってもうまいこといかない男、虚勢を張ってる市井の人たちが、揺るぎないバンド・サウンドの後ろ盾を得て表へ飛び出した。ピンのときは観察者の視点が勝ったが、バンドになると途端に観られていたほうが前へ出る。スロー・ブルースやジャングル・ビートといった多彩なリズムで市井の人たちの心臓の鼓動や足音までもが歌うように踊るように息づいて見える。4人によるバンドとしての関係性が見えるのもいい。他の3人が本当にナオユキの世界を愛し、一緒に生きている感じが伝わってくる。「どうですか。このイベントにナオユキがバンドで出演することに意味がある。なにわブルースだと思います」とドラマーとして参加するKenKenも上気した様子で語る。アフターライヴで「昔のブルースもこんな感じで歌われてきたんじゃないですか」とナオユキは語ってくれた。またどこかで彼らに出会いたい。
◆ELEKTRIC MOTH feat. Carmen Maki
松川純一郎(g/vo)、小笠原義弘(b/vo)、丹菊正和(dr/vo)、宮川“HAMAYAN”隆(key)

セカンド・アルバムのレコーディング進行中のエレクトリック・モスと共にカルメン・マキが「なにわBF」初登場。「大阪だとこの曲だと思いました」と1曲目に選んだのは30年以上歌っているという西岡恭蔵の〈アフリカの月〉。いろいろな人の声で耳にしてきた歌だが「古い港町……」と歌い出した瞬間に遠い国の空の下にこころ運ばれた。なんておおらかで豊かな世界なのだろうか。確かにその瞳に映る月を感じた。
ビリー・ホリデイやダイナ・ワシントンはじめ数々のシンガーが歌ってきたガーシュウィンの〈The Man I Love〉も、初めて耳にしたようにみずみずしかった。カルメン・マキが曲にまつわるエピソードを語り始めると、小説か絵本のページをめくっているように曲の背景に佇むストーリーがふくらんでいく。一人、また一人とヒッピーが集まり、やがて40万人のイベントになった風景が鮮やかに浮かんだ〈Woodstock〉も同様だった。メロディの向こう側に生きる人たちにまで心を寄せて歌う、その声が胸に響いた。
ラストは「日本のロックの黎明期に竹田和夫と一緒に作った曲を歌ってみたいと思います」と〈Understand〉を。1971年の『カルメン・マキ/ブルース・クリエイション』の1曲目を飾ったナンバーだ。ブルース・フェスのラストにふさわしい圧巻のパフォーマンスだった。
「今日、懐かしい友だちはもちろん、知らなかった若いミュージシャンにも出会えて、ここに来て本当によかった」とカルメン・マキ。彼女の歌に満たされた私たちもよかったと心から思える夜だった。
▶Day 2も近日公開!
























