2018.9.4

【特集:伝えておきたいブルースのこと】㉜嫌われても時代とともに

ソウルの時代のトピカル・ブルース
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ゼブラ柄のジャケットがトレードマークのJ.B.ルノアーは 人種差別など社会問題について積極的に歌った Photo by Peter Amft

1950年代半ばから大きく動き出していた、黒人の権利と平等を求める公民権運動は、1963年のワシントン大行進でひとつの頂点を迎えた。

 時を同じくして黒人音楽のトレンドも大きな変革をみせていた。特筆すべきは「ソウル・ミュージック」の台頭だ。やや乱暴にソウルを定義するなら、リズム&ブルースを基盤に、歌唱法や楽曲の面でゴスペルの表現(黒人教会の手法)を取り込んだものとなる。またその歌詞には「アーバン・ブルース」と同じ様に、問題に取り組む姿勢、解決法を提示する性質があった。

 ブラック・ミュージックにおけるトレンドの変化は急速で、過ぎ去ったものへの注目は急降下する。B・B・キングは60年代のソウルの時代に若い黒人の客からブーイングを受けたことを回想し、自伝で以下のように語った。
「(前に)突き進んでいく過程で、古い形の音楽は邪魔なものにしか思えなくなる。それは我々が忘れてしまいたい時代の象徴であり、我々が恥と屈辱にまみれていた歴史の一時期を象徴するものだからだ。(中略)若い黒人たちの心の中では、ブルースは自分たちが育ってきた場所と時間を意味するものでしかなかったのだ」(『だから私はブルースを歌う B・B・キング自叙伝』石山淳訳)

 確かにブルースに対しそうした視線を投げかける者もいただろう。それでもブルースを歌い続けるものは尽きなかった。中には時代のうねりをブルースに歌い込んだ者もいた。

 時事問題を扱ったブルース(トピカル・ブルース)を得意としたJ・B・ルノアーは、ソウルの時代にもブルースが生命力あるプロテスト・ソングになりうることを示した一人だ。1965年にシカゴで録音されたアルバム『アラバマ・ブルース』は、人種問題、ヴェトナム戦争についての率直な思いを刻んだ傑作だ。しかし当時はヨーロッパのみの発売で、アメリカで発売されたのはルノアーの死後であった。

 ある種のブルースは、ソウルの時代には古びていたかもしれない。しかし過去のものとして倉庫にしまうには早い、活力に満ちたブルースが静かに息づいていた。

1963年8月28日、自由と平等を求めるプラカードを手に20万人がワシントンD.C.へ行進した
1963年8月28日、自由と平等を求めるプラカードを手に20万人がワシントンD.C.へ行進した Warren K. Leffler / Library of Congress

J.B. Lenoir / Alabama Blues
J.B. Lenoir / Alabama Blues

(CBS 62593) [1979]

特集:伝えておきたいブルースのこと50