2018.9.14

【特集:伝えておきたいブルースのこと】㊶メインストリームの裏で

痛いほどに突き刺さる告発ブルース
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カミンズ・プリズンの事件を伝える記事。1968年1月30日付 The Bulletin紙より

 1968年、アーカンソー州のカミンズ刑務所で三つの白骨遺体が見つかった。一体は頭部が無かった。もう一体は木製の粗野な棺に収めるために足が砕かれていた。さらにもう一体は頭蓋骨がつぶされていた。それは所内で殺された黒い肌の囚人たちだった。同年初めに新しく所長に就いたトム・マートンによって、長年行なわれてきた所内での殺人と遺体遺棄が明るみになったのである。

 当時全米で大きなニュースとなったこの事件。その遺体が埋められている場所を案内した59才の黒人服役囚、リューベン・ジョンスンは30年近く刑務所を出たり入ったりしてきた。彼自身、遺体を10人か12人は埋めたという。また、殺人は刑務所内で繰り返されていると語り、掘り返せば2千人は埋まっているのでは、と恐ろしい数字を上げていた。囚人が綿花を摘む作業にもたつくと、看守がこん棒で殴打し、それは時に死に至ることもあったと、所内の医師は語っている。

 塀の中で平然と行なわれていた、黒人に対する残虐な行為。百年以上前の奴隷制時代から、何が変わったというのだろう。ブルースを生み出した南部の社会・経済システムが途切れることなく、下層の黒人を締め付ける。
 この事件は〈カミンズ・プリズン・ファーム〉という、息苦しいほどの緊張感に満ちたブルースになった。歌ったのは当時27才、アーカンソー州に生まれたカルヴィン・リーヴィだ。

 曲は1968年にソウル・ビート・レーベルから出され、その後、ブルー・フォックスから出し直されると、1970年にR&Bチャート40位を記録する。人種問題を扱った、渾身の告発ブルースが同胞の心をとらえたのである。

 この怒りのブルースは1976年、インディペンデント・レーベルとしてスタートを切った、Pヴァイン・スペシャルの第一弾レコードとして日本に紹介された。シングル盤を熱心に追っていた者でなければ耳にすることはなかったこの曲を、アルバムとして発表し、メインストリームの裏でギラリと輝く、同時代のリアル・ブルースを多くの人の耳に届けたのである。偉業というしかない。

カルヴィン・リーヴィ/カミンズ・プリズン・ファーム
カルヴィン・リーヴィ/カミンズ・プリズン・ファーム
(Pヴァイン・スペシャル PLP-701) [1976]
このアルバムによって多くの人が、リアルな同時代ブルースを知ることになった

カルヴィン・リーヴィ
カルヴィン・リーヴィ

カミンズ・プリズン・ファーム
カミンズ・プリズン・ファーム SSS
カミンズ・プリズン・ファームはナッシュヴィルのSSSインターナショナルからもリリースされた

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